▼ 少しのお願い
遊莉SS
「あのね、遊兎くん」
「なんだ?」
莉兎は積もった雪で小さな雪だるまを作りながらも小さく笑いながら隣にいる遊兎へと話しかけた
たとえば、たとえばの話なんだよ。と
「莉兎がもしも、戦いの中で死んじゃったら遊兎くんはなにも考えなくていいからね」
えへへ、といつもの銚子で笑いながらも手袋もせずに素手で雪だるまー、と丸めている莉兎に遊兎は眉を潜めた。
それは、どうゆう意味だ?と
「莉兎、それは...」
「こないだも死に掛けたし、もしかしたらって思って!遊兎くんにはね、素敵な家族作って欲しいの。莉兎からのお願い」
立ち上がりながらも誤魔化すように雪だるまできた!と変わらずはしゃぐ莉兎に遊兎は違和感を感じた。
黒軍敷地内な中庭で雪だるまをせっせと作った莉兎はちょうど影になるであろう木陰付近に目と口、手を付けた少しこぶりな雪だるまを置きながら、振り返り笑った
「死にたくないけど、いつかは死ぬでしょ?だから、約束して欲しいの」
莉兎が死んでも、遊兎くんはいっぱい幸せになってね、て
「ね、簡単なお願いでしょ?」
「なあ、莉兎」
「ん?」
「俺が死んだら、お前はどうするんだ?」
目をきょとんとさせた後に莉兎は小さく笑いながら面白おかしげにしつつも小さく言葉を紡いだ。
「んーとね、遊兎くんの分も幸せになる!じゃだめかなぁ?でも、莉兎のこと置いていったら呪うかもよー?」
幽霊みたいな真似をしながら面白おかしげに言う莉兎についついと笑いがこみ上げてしまう。
「呪われるのは嫌だからまだ死ねないな」
へへ、と笑いながらも莉兎は遊兎の手を掴みながらも小さく、幸せそうに笑った
この戦争の時代いつ死ぬかもわからないし、いつこの手を握れなくなるかも、笑顔を見れなくなるかもわからない。
「遊兎くん、好きだよ」
fin.
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