▼ 君の笑顔。
【遊兎×莉兎】
「莉兎はなんで、腹、出してるんだ?」
「可愛いから!」
きょとんとした顔のあとに莉兎は満面の笑みでお腹出してた方が可愛いでしょ〜?なんてことを言うのだなら思わず遊兎は頭を悩ました。
いつもお腹痛いとうんうん唸ってる彼女を気にかけてるのも、なんか、馬鹿馬鹿しくなってきたと、今、思った。
真冬でも絶対にお腹は隠そうとせずに、結局お腹を下し、莉兎は遊兎の学ランを借りる始末だ。
もう、いい加減にしたらどうだ?と言おうがきっと莉兎は可愛いからの一点張りだと思うので遊兎はもはや何も言葉は返さない。
「だって、莉兎は好きなことを今しかできないと思ってるからやるの。大人になったらこんなおへそ出しなんて、出来ないし、へへ」
ぽりぽりと頭を書きながら笑う莉兎にちょっとだけ可愛いと思ったのは遊兎の胸だけのひみつ。
いつも莉兎はそうだやたら元気かと思えばいきなりしょんぼりとしたり、しおらしくなったりする。
きっと、彼女のなかにも何かあるのだろう。と思う。
「…なあ、莉兎」
「あー、年上を呼び捨てにしちゃダメなんだァ〜〜」
「ちっ、じゃあ、黒崎さん?」
「…えっとぉ…田中さん??」
「俺の名字は当麻だよ!!」
忘れてた。なんて告げる彼女に気がつけばいつもの調子に戻っている。
えへへ、とおどけたように笑う彼女に遊兎はただ、肩を竦めた。
「でも、莉兎は遊兎くんの学ラン着るの、好きなんだ。…って、理由じゃだめかな?」
「…はっ、何言って…」
頬を桃色に染めながらも笑う莉兎に遊兎
ぼっと赤くしながらもただ、笑った。
しおらしい彼女も男前な彼女もきっと好きなんだと。
「莉兎は俺の前だけ、素の莉兎でいろよ」
「あれ、遊兎くん、今日は男前だねえ?」
遊兎は自分よりも小柄な莉兎を抱き締めつつも唇を寄せて、ただ、口づけた。
そして、この先何があろうともはなさないと胸に誓った。
この、小さな体に秘めた色々な気持ちを背負った彼女に少しでも寂しい思いをさせないようにと抱きしめる力を強めた。
「…遊兎くん?」
「ずっと俺がいるから、もう、泣くな」
いつも影で泣いているのを知っていた。
だから、もう泣かないで欲しい。なくなら、自分の胸で泣いて欲しいと遊兎は思った
「知ってたの?変態」
「ばっ!どこが、変態だよ」
べしっとでこぴんをしながら、遊兎はただ笑った。
惚れた方の負け。よく言ったものだ。いつか彼女の泣かない世界に変わればいい。ただ、それだけ、遊兎は思う
end.
「なあ、莉兎」
「んー?」
「寂しいなら、俺のところに来るか?」
「え、やだ(即答)」
「あ、ソウカソウダヨナ(心折れた)」
「だって遊兎くん居ないと気まずいし淋しいもん」
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