学生戦争 | ナノ


▼ 最後のお願いとわがままを

帝と青夜くん

「おい、お前は、そっちの獲物を取れよ!!!俺のを取るんじゃねぇ!」

「いっっったい!!!帝っていつも乱暴だよね〜〜」

帝と青夜は白軍に所属している三年生。そして、今は二人に与えられた黒軍の撲滅をしている真っ最中。

背中を合わせ、黒軍に囲まれている中、必死に二人は刀を振る。たとえ黒軍に負けて拘束され、拷問されようが二人は負けない。

「あと一人は俺が貰う」
「あ、ずるい!!!!俺も!」

駆け出しては最後の一人をどちらが捉えようか必死だった。
そんな茶番を任務が重なる度に繰り返し、街を破壊、白軍の施設を破壊を繰り返しては上層部から二人はこっぴどく怒られる事を繰り返している。



ーーーー


「最近、帝を見かけないなぁ」

以前はやたら二人で居てはバカ騒ぎを繰り返し、上官に怒られたりしていたのに今は馬鹿騒ぎをする相手が隣にいない

きょろきょろと周りを見渡したりいつも帝がいるはずの屋上、医務室、自室を探してみても居ない。

長期任務に、出かけた?

「いや、そんなはず…」

悶々と考えていても答えは見つからなかった。一体帝はどこへ消えてしまったんだろう。

「何してんだよ、チビ」
「チビじゃな、…って帝!!!!」

うるせー、耳元で騒ぐなよと耳を塞ぎながら目を細めている。
久々に見た、帝の姿についテンションが上がってしまった

「今までどこにいたんだよ!探したんだよ」

「いや、ちょっとな。それよりも、任務だとよ」

苦笑いをこぼしながらも頭をかく帝を怪しく思った。
帝は、何かを隠してる時は必ず苦笑いをしながら頭をかくのが癖だ。
何かを、隠してる。そう思っても俺は、聞かなかった。 いつも、帝からは話してくれるから帝が話してくれるまで待とうと思った。


その時はーー…




side Mikado

「…は?何で、…青、夜が…」

「これは我々が決めた結果だ。…貴様はアイツを庇う気か?」

「当たり前だろ!!!!俺が納得する様に説明しろ!!!!!!!」

目をこれでもかと言うほどに見開いた帝は、目の前にいる上層部の輩を睨み付けた。
そう、告げられた言葉は青夜の処刑。そんなの帝は、認められなかった

どうしてあいつが? どうして?
建物壊したのも、何もかも全部俺がやったから、全部背負うから


「青夜は、殺さないでくれ。代わりに、俺が…堕ちる」

いつも青夜の笑顔に俺は助けられてきた。 昔に、ほんと昔の話だーー


青夜と俺は二人だけの任務に出たことがある。
周りは黒軍と赤軍に囲まれてしまい、絶体絶命にも等しい状況で、どうしたらいいか俺でさえもわからなくて、青夜を見れば

「帝!俺の背中はお前に預けるからお前の背中は俺に預けろよな!」

「おま、何言って…」

「背中を取られれば負けだぜ?帝!」

にかっと笑いながらも刀を手に取り身構え、背中を俺に預ける青夜
そうか、俺は、諦めていた
こんな大人数に勝てる訳が無い、と。そんなの最初から諦めてたら勝てるわけがねぇ

にぃっと笑えば帝も刀を構えながら青夜の背中に己の背中を預けた。
たとえ負けて、死んだとしてももう悔いはないかも知れない。 大切な相方となら

「行くぜ、俺の相方」
「み、帝!」

何人もの人を薙ぎ倒し、殺しては血飛沫を浴びながらも負けようとは思わなかった。
幾ら、刺されて、痛くて痛くて今すぐにでも楽になりたい。でも、俺はまだ。

青夜と共にいたいと願った。










「…か、ったな…」
「ほん、と…無茶だよ」
「あー、いてぇ」

地面に寝転がり二人は空を見上げながら騒いだ。
帝はきっと青夜となら、この先もずっと背中を預けられるただ一人だけのやつだと思った。

そんなのはただのひと時の夢物語だった。 その先を願ったら、これ以上の幸せを思い望んだらその時点で終わりなんだと



ーーー…



「あいつの代わりにお前が?」
「ああ、かたは、青夜につけさせる。だから、後少しだけ時間をくれ。それでいいだろ?」
「…代わりか、私にはわからないな。なぜそこまであいつを生かしておきたい?」
「あいつは、きっとーー」


きっとこの血塗られた時代を、もう誰も傷つかなくて笑いあえる未来を作ってくれそうなきがした。
俺には出来ないから、青夜にかけてみたかった。 俺はこの戦争でたくさんのものを失った。だからーー

「…青夜なら変えてくれると思ってるからだ」

ほう…では、私も賭けてみよう。いいものを見れるのを楽しみにしているぞ


そう告げた上層部は暗闇に姿を消していった。
そして、帝に残されたタイムリミットは後、数日だけ。 青夜との時間を大切にしながら過ごしたい。



「…こんなこと、あいつが喜ぶわけがねえ」

ぽつりと帝は切なさを孕めながらもつぶやいた。
きっと本当のことを知ったらあいつは絶対に自分がと、庇うはずだ。

俺はーー…


「お前に変えて欲しいんだよ。この時代も血塗られた未来をみんなが平和に暮らせる明るい未来に変えて欲しいんだ」

だから、俺の最初で最後のわがままに付き合ってくれよ。ごめんな、青夜




ーーー……




「…よし、行くか」
「え、もう行くの?早くない?」

帝は任務前に刀を磨いていた。ただひとつのことだけを考えながらも磨いていた。
このまま青夜とさよならなんて…でも、もう決めことだ。

「なら、ここに残ってろ。俺一人で片付けてやるよ」
「あ!俺も行く!待てよ、帝!」

隣を歩く彼の姿にふいに笑みが綻んでしまう。 これが最後だと思うととても、胸が痛くなる。

「さてと、どうするかなぁ」

黒軍に囲まれては苦笑いをこぼす。
どうやら黒軍は白軍に相当の恨みがあるのかはわからないが、かなり牙を向けてくる。
顔を合わせれば殺し合いの始まり


「ほんっと懲りないよな。この世界も、俺自身も嫌になるぜ」

「どうかしたのか?帝」

「いや、なんでもねぇよ。さっさと片付けて帰ろう」

「あったりまえ!」

にかっと八重歯を光らせて笑う青夜に帝は仄かに表情を崩し、笑う。

これが最後。これだけが帝の心の中にある。
たとえ死んだとしても後悔なんてない。汚点だらけの自分の人生だったけど、青夜と友人になって、親友になって、相棒そして双璧に。
とても素敵で楽しくて大切にしたい思い出。

「行くぞ」
「帝と俺なら楽勝でしょ」

黒軍を薙ぎ払い、刀で胸に中心を突き刺せば血飛沫が舞い、折角新調した二人の制服は白から赤へと姿を変えた。

その後は、すごい波乱だった。
帝の背中は青夜が。青夜の背中は帝が守るように戦いながらすきはひとつも見せない。

「もー、無理!」

どさっと地面に倒れる青夜とそれを見つめている帝。
敵はなんとか倒し、残りの生かした者達はすきを見計らい逃げ出してしまった。

「…なあ、青夜」

「なにさ?」

「俺を殺せ」

「…は?」

目を細め、帝は切なげに笑った。
自分の最後を青夜にしてもらえるなんて嬉しい。そして、今までありがとう

「なに、冗談言ってんだ…」
「冗談じゃねえよ。早く殺せ」
「そんなの出来ない!!!」

帝は笑いながら青夜に近寄った。うんって言葉は聞けないことぐらいわかっていた。

「じゃあ、俺からのお願いだ。殺せ」

「だから、なんで…」

「俺が任務をミスったから上層部からの命令だっつーの。な、青夜。俺は、殺されるならお前がいいんだ」

あとひとつ、かけてみたいんだ。
きっと青夜ならこの世界を変えてくれると思ってるから、俺は命と引換にお前を生かしたい


だから、俺からの最後のお願い。お前なら聞いてくれるよな?


「俺からお願いされた言っつってたろ?俺からの最後のわがままとお願いだ」

「ほんっと、帝って人を誑かすのが得意だよなっ、何人食ってきたんだよ、馬鹿」

「さあ?手じゃ収まりきらないくらいだな。青夜も襲おうと思ったぜ?でも、何か、お前は俺のタイプじゃねえからな」

くすくすと笑いながら、帝は鞘から自分の刀を取り出し、青夜に向けた。そして、最後のわがままとお願いを囁く


「殺してくれ」





青夜は目尻から一粒の雫を零しながら人思いに帝の腹部に刀を突き刺した。
ふと、帝は笑いながら目を閉じる


「俺はお前を忘れない。また、な」

「うわァあああああああああああああああああ!!!!!」



帝の体を抱きしめながら青夜はただただ泣き続けた。
帝は薄く笑いながら夢の中でまた、二人で出会い、たとえ軍が違えど背中を合わせて、笑い合いながらまた戦いたいと密かに願ったのだった









ーーー
ーー



帝の存在が白軍から抹消されてから三ヶ月が過ぎた頃。
帝と外見も中身も声もそっくりな椎名帝と出会い、仲違いをするのはまた別のお話。

帝が生きていたのは黒軍の気まぐれな赤髪に助けられたからだとかちがかったかなとか。



fin.


あ と が き

お粗末さまでした//
青夜くんと帝のお話でした('ω') このふたりは深いなにかで繋がってたらいいなあと思う(*̀́*) ̑̑


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