「円堂くんは地球人だし、酸素がないと生きていけないことは分かってるよ、でも、でもね!」

キャプテンにもじもじしながら話しかけているのは基山ヒロトくんだ。眉目秀麗、成績優秀と周囲には認められている少年であるのに頭は実に残念だ。残念すぎる。キャプテンを前にすると優等生の基山ヒロトはどこかに消えてしまうらしい

「俺、円堂くんと一緒に家に帰りたいんだ!」

お前の家は何処にあるんだというツッコミをキャプテンには期待していない。キャプテンがツッコミをいれる所なんて、見たことがないんだ。

キャプテンは真剣に迫る基山くんが不思議なのか少し眉間に皺を寄せる。ツッコミまではいかないが、流石のキャプテンも基山くんの電波には手を焼くのだろう。

「いいぞ」

そんな馬鹿な。キャプテンの解答に目と耳を疑うが、返答はYESと聞き間違いではないらしい。電波が移ったのか、とにかくどちらも手遅れだ。中学生は多感な時期ではあるが、行き過ぎだ

「本当に!?」
「ああ、でも俺宇宙に行くの初めてだし、食べ物が心配だな」

そこじゃない。そんなツッコミは喉も通らない。お馬鹿なキャプテンとただの電波ではもうどうしようもない。諦め半分に成り行きを見守る。浮かれにやける基山くんと真面目に宇宙帰省を考えるキャプテン。まさにシュールだ

「大丈夫だよ、大気圏突破する時は少しきついけど、慣れたら最高なんだよ無重力って!」

「サッカーはできるのか?」

「うん、南雲のいた火星ではメジャーだよ。涼野の水星は静かな星だからあまりはしゃげないけどね」

「ヒロトの星は?」

「俺の星はどうだろう、もうずっと帰ってないからなあ…帰らないと分からないや」

基山くんはぼんやり頭上を見上げた。キャプテンはそんな基山の腕をとった。決意した表情だ。

「じゃあ、ヒロトの星でサッカーしよう!」
「円堂くん!」

ガッシリ握手をした2人はそのまま宇宙に手を振った。頭上では太陽はジリジリと紫外光線を放っている。ああ暑い。未だに宇宙を見上げている2人から視線を逸らし、僕は盆に宇宙に帰るらしい基山くんにお土産のリクエストを考えることにした。宇宙の名産品ってなんだろうなあ…



「おまえら暑さにやられすぎだ」

風丸くんの呆れた声が汗だらけの身体を伝って落ちた。


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アンケート1位:脳内お花畑基山

 
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