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真っ白な生クリームと赤く熟した苺のまるで魔法のようにキラキラしたケーキ、角砂糖を溶かした紅茶に酔いしれて甘い恋の話をする。それは女の子に抱くイメージであった。しかしどうだろう、現在目の前ではそのイメージが崩れてしまうような光景が広がっている
「僕、ここのタルト気になってたんだぁ」
「わかるわかる、1人じゃ恥ずかしいよね」
お前らは女子か!というツッコミは店の雰囲気に合わないので珈琲と一緒に飲み込んだ。女子で溢れている店内で、ただでさえ男4人は目立っているのに更に浮いてしまう。それだけは避けたい
「風丸くんおっとなー、珈琲なんか飲んじゃって」
「紅茶の方が甘くて美味しいのに」
「「ね〜っ!」」
吹雪とヒロトは周囲なんてみえていないように自由だ。既に何回もケーキを食べているのにまだフォークは握った。まだまだ食べるつもりらしい。…食べるだけならまだ許容範囲内だが、問題は店の雰囲気に絆された口調とテンションだ。女の子よろしく、語尾が上がっている。
「お前ら、恥ずかしくないのか」
半ば呆れて呟くが、ヒロトと吹雪は首を傾げるだけだ。しらなーい♪そんな電波を脳がキャッチした。店を出たらしばく
「風丸くんは気にしすぎだよ」
「そうそう、美味しいんだから楽しまなきゃ損だよ」
キャッキャと再び席を立ってケーキを選びに旅立った2人の背中を見送る。あいつらは顔立ちも悪くないから余計に目立つ。たぶん分かってやっているのだろう。女子は黄色い声で騒ぎ立てる。
「…大丈夫か?」
「おう」
静かに(夢中で)ケーキを食べていた円堂もマイペースだ。ケーキの食べ方が下手な円堂の皿はぐしゃぐしゃだ。不器用さは皿に表れるらしい。微笑ましい。食べ方が下手なせいで口横についたスポンジを左手で拭う。
「落ち着いて食え、時間は無制限なんだから」
「!ああ」
元気良く返事をした円堂は再びケーキを食べる作業へ移った。ヒロトと吹雪だけだったらもう帰るぞと襟を掴んででも帰るが、円堂が楽しんでいるからそれはしない。右手で珈琲を飲みながら、左手に乗せたままのスポンジをどうしようかと暫く悩む。とりあえずティッシュに乗せることにした。恋人なら食べるという選択肢があるが、いまは店だし円堂はまだ幼なじみだから止めておいた。俺ってば紳士
「えー、風丸くんまじKY〜!」
「そこは食べる所でしょー!」
ケーキを山のように盛った2人がブーイングをする。心底情けない、という表情に腹が立つ。円堂はケーキに夢中で聞いていない。どうにもこのメンバーになると俺が不利だ。今度は染岡に代理を頼もう。そうしよう。
「うるせえ」
大した反論もできず、色々なものを再び珈琲と飲み込んだ。きっと明日は胸焼けをする。キラキラしたケーキと殺人級に甘い紅茶の魔法に性別は関係ないらしいのだから。
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セリフは上→吹雪 下→基山のつもり