炭酸水がしゅわしゅわ跳ねて刺激する。夏を反射するように細かな泡が喉で弾けて、ぱちぱち騒ぐ。小さい頃からの癖で炭酸を飲むと目を細めてしまう、なんだか炭酸水は眩しいのだ。

「くぅーっ」

胃を縦横無尽に跳ね回る炭酸を押さえつけるように目を細める。爽やかな味は暑さを緩和するようで好きだ。部活終わりの炭酸はまさに炭酸の魅力を引き出すのではないかと思っている。乾いた身体に炭酸の細かな泡が行き渡っていくのだ。ぜひ試してほしい。本当はコップに移して氷を入れたいのだが、今は自販機なので望めない。

3口飲んでからペットボトルに入った泡を夕日に透かしてみる。しゅわしゅわ夕日も溶けそうだと思わず口元が緩む。もう少し眺めていようかと考えていると、泡をかき分けてチームメイトのアフロディが現れた。

「アフロディ!」
「やあ」

なぜか笑っているアフロディを不思議に思い、ペットボトルを下げる。喉の奥ではまだ炭酸が弾けている。

「なんで笑ってるんだ?」
「だって、君があまりにも美味しそうに炭酸を飲んでいたから」

どうやら見られていたらしい。少し恥ずかしくてペットボトルを強く握る。どうにか誤魔化そうと話題を考えてみる。アフロディは炭酸を飲んだことがあるのだろうか?アフロディと自販機の組み合わせは中々レアだと思う。

「アフロディは好きなのか?」
「うん、好きだよ」

金色の髪はさらさら揺れて、作り物のように精巧な顔立ちはやはり微笑みを絶やさない。サッカー意外の会話が出て来ず、投げやりにペットボトルを差し出した。アフロディは紅い瞳を大きくする。

「じゃあ、飲むか?」

差し出したペットボトルを驚いた表情でみたアフロディだったが、白くて細い指は受け取った。

「ありがとう」

ぐび、と喉が鳴るのを間近でみるのは初めてで少しドキリとした。1口飲んだアフロディは指で口元を拭いながらはじける炭酸を味わっている。

「ねえ円堂くん」
「うん?」
「関節キスだね」

なんでもないように言うので凝視すると、アフロディは俺の目の前にペットボトルをかざした。小さな泡は上へ上へ向かう。少し歪んだ水面の向こう、アフロディは笑う

「好きだよ」

ゆっくり発された言葉は耳で弾けて心臓で跳ねた。まるで自分が泡になったように地球が揺れている。早く返事がしたいのに、目の前のアフロディにただ目を細めることしかできない。なんて眩しいんだろう!

 
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