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魚になったらとても無機質な恋愛をするのだろう。食うか食われるかの毎日を生き抜き、子孫を残すことだけを死ぬ目的に生きている。無機質な恋愛というよりそれは身体に組み込まれた本能に違いない。そう考えると人間はなんと非生産的な毎日を送っているのだろうか。とても無駄が多い生き物だ。
「本能だけで生きていたら、僕は子孫が残せない欠陥品なんだよ」
「ふうん」
難しい話が苦手なキャプテンはドリンクを飲みながら僕の話を聞いていた。きっとキャプテンの頭では魚が泳いでいるに違いない。遠回しに伝えた意味を汲み取ってくれるだろうかと淡い期待をしたが、やはり難しかったかもしれない。
「サッカーも意味のないことなのかな」
「生物の目的は生殖だからね、ライオンはサッカーしないでしょ?」
うん、と理解したように頷いたキャプテンはサッカーボールを撫でた。人間の社会には邪魔なものが溢れている。邪魔なものが溢れているから僕のような欠陥品も生きられるのだろう。こうも無駄が自分に利益を齎すと世界は僕の為にあるのではないかと考えてしまう
「人間で良かったな、俺たち」
ボールを膝に置いたままキャプテンは僕が欲しかった解答をした。それだけで嬉しくなるのだから、人間の社会はもっと無駄で溢れてしまえばいい。何が正しいかなんて常識も無駄なものに流されて崩されて、本能なんかが馬鹿らしくなる世界が訪れたらいい。非生産的万々歳である。
「本当だね」
こうして魚の群れが無機質な恋愛をしているうちに、人間欠陥品の僕たちは手を繋ぐのでした。