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ぷかぷかと無重力空間を漂っていると地球から泣き声がした。私の星はわりかし地球に近いので、あの子の感情はよく伝わるのだ。ヒロトは今ごろ泣いているだろう、いつだってあの子と感情を共有したがるのだから。実に鬱陶しい、あいつは恋に盲目だから。
「さみしいよ」
あの子は泣いていた。地球は大きいから同じ種族がたくさんいるのにさみしいと言う。私たちは1人が1つの星に住んでいるというのに。人間の感性は私たちと違うから分からない。ぽろぽろと涙をあの子は流す。地球は重量があるからあの涙が私の元に来ることはない。
もし、もしもあの子の涙がここに浮かんで来たら。私はどうするだろうか。ヒロトに売りつける?南雲に見せびらかす?どれも違う気がする。私は、私なら…
考えているとあの子がこちらをみた。私は少し驚いて目を反らす。あの子から私がみえるはずはないのに、酷く心臓がうるさい。あの子は涙を流したまま私をみつめている。宇宙にいる私を見つけられるはずがないのに
「あいたいよ」
会いたいと泣いているあの子は可哀相だ。私たちが地球にいた記憶は地球から消したのに、なぜかあの子には残ってしまったのだ。だから、私のいない世界であの子は私を思って泣く。本当に不運で可哀相なやつだ
ぽろぽろ、気付いたら私の瞳からも涙が流れた。ぷかぷかと暫く浮いていた涙は宇宙をさ迷ってしまう。南雲の星に行ったら面倒だ。あの子に会いたくて、涙を拭いたくて泣くなんて、そんなのみっともない。
急いで潰そうとした私の涙は、勢いよく地球に落ちてしまった。しまった、きっと地球は雨になる。あの子は傘を持っていないのに。慌てて見下ろすと、私の涙があの子の頬に落ちた。それを触るとあの子はこちらをみてからまた泣いてしまった。雨は次から次に降り注ぐ。宇宙にいる私にはなにもできない
「ガゼル」
これ以上私が泣けばもっとあの子は濡れてしまう。そう思っているのに私の涙はとまりそうにない。私だってあいたいよ、いますぐその涙を拭ってやりたいんだよ円堂守