「守ちゃん、どこに行くの?」
「トイレに行くだけだよ」

「わたしも行く」
「うん」

吹雪は円堂依存症である。席替えはいつも円堂の後ろで固定されている。吹雪は円堂が視界にいないと泣き出すからだ。そんな吹雪を円堂は煩わしく思うわけでもなく、それが当然といった風に扱っている。

それはとても不自然なこてであるが、円堂は動じない。吹雪に限らず、基山や風丸など不自然な生徒が多いが、やはり円堂は意に介してないようだ。つまり、円堂は彼女たちが自らに向ける好意が歪んでいることに全く気付いていなかった。


「寄生虫」

連れ立ってトイレへ向かう背中に声がかけられた。吹雪はゆっくり振り返る。寄生虫と呼ばれても構わなかないらしく表情に怒りはない。むしろ吹雪はそれを望んでいるのだろう、全てを見透かした上で立向居は吹雪に声を投げたのだ。

「ちゃんと許可はとったよ」
「円堂さんは優しいから断れないだけです」

吹雪は敵に無関心だ。立向居に噛み付かれても吹雪に苛立ちや怒りはない。敵を恨むことは1番に円堂を思うことにならないと考えるからだ。吹雪は円堂だけを愛することが出来ればそれだけでいいのだ。

反対に立向居は円堂に近付く全ての人間を憎み恨んでいる。吹雪はとくに円堂の近くから離れないので立向居は嫌っていた。立向居にとって円堂以外の人間は嫌悪でしかない。この2人は風丸と基山・ミストレと照美に続く犬猿の仲というやつだった。


「吹雪さんが円堂さんの近くにいるのがたまらなく嫌なんです」
「ふうん、私は守ちゃんの近くにいられないのがたまらなく嫌」

「離れてください」
「絶対にいや」

円堂は右手を吹雪に掴まれているので2人を置いて用事を済ましにはいけない。それに吹雪が泣き出すことは目に見えている。小さく溜息をついて円堂は左手で立向居の腕をとった。

「立向居も一緒に行こう、な?」

「え、円堂さあん!」

立向居は円堂から繋がれた手に感動した。まだ隣に吹雪がいるが、怒りはだいぶ薄くなったようだ。吹雪は円堂が隣にいるので不満は1つもない

「あと3分だ、急ぐぞ!」

円堂を中心にした3人はドタバタと走って教室をあとにした。


 
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