「ここが稲妻女学院かぁ!」

"私立稲妻女学院"と風格漂う学校名が書かれたプレートを確認して、大きな校舎を眺めれば少しの緊張とそれを上回る期待に心臓がドキドキと高鳴るのを感じた。

「よしっ!」

気合いを入れるように頬をパシッと叩き、豪華で高い門をくぐった。今日から私、円堂守は私立稲妻女学院で学園生活を送るんだ!

張り切った勢いは良かったが、稲妻女学院はとても広かった。靴箱を抜けたホールに案内図を発見し、眺めてみる。おそらくフロア毎に色分けされているのであろう図面は鮮やかなだけで親切であるとは言い難い。

「わかんねえ!」

そもそも、地図記号すら曖昧な私には学校の見取り図すら難しかった。

-----***-----

チャイムが鳴る3分前、保健室から教室へ向かおうと歩いていると見慣れない制服を発見した。

その子はオレンジ色のバンダナを頭にしている茶色の長い髪をツインテールにした女の子で、学校案内板を眺めているが、読み取れないのか首を左右に傾げている。

案内してあげようと女の子に近付くと、動きを止めた女の子は両手を握り締めて声高々に叫んだ

「わかんねえ!」

「ぷはっ!」

予想外な行動に思わず吹き出してしまった。私の声に気付いた女の子が勢い良く振り向く。大きな瞳に心臓が射られ、それは一瞬だった。どくん、と私は恋に落ちてしまったのだ。

「あっ、ごめんね。笑っちゃって…お詫びと言っては何だけど。私が案内しましょうか?」

「えっ!いいのか!?俺、あ…私は円堂守!よろしくな!」

「私は基山ヒロト、よろしくね」

差し出した腕に円堂守ちゃんが手を重ねる、私の病弱な腕とは違って健康的な腕に私の心臓はまたときめく。

ドキドキしてしまう、守ちゃんの顔をよく眺めれば、彼女は眩しい程の笑顔をみせた。

「あのさ、友達になってくれないか?女学院って初めてで、俺…あ、私こんな性格だから不安でさ」

少し眉を下げた彼女はこちらを伺うように語尾が小さくなった。可愛らしい人!友達で止まれるか、私の方が不安だ

「勿論だよ、私も守ちゃんと友達になりたい」

「じゃあ、決まりだな!」

守ちゃんは握手したままの手を数回強く振った。このままずっと手を繋いでいたいけれど、チャイムに驚いた守ちゃんが手を離してしまった。残念。

「チャイム鳴っちゃった!ヒロト大丈夫か?」

「大丈夫、退屈なHRより、守と一緒にいたいから」

「ありがとうヒロトっ!」

守ちゃんが"ヒロト"と呼んでくれた事が嬉しくて私も呼び捨てにしてみた。守ちゃん、守、口の中で練習をしながら、職員室までの道を歩く。

広い校舎を覚えるように守がキョロキョロと首を動かす。小動物みたい、私は少しだけ落ち着いた胸を撫でた。

「なあ」
「うん?」

「ヒロトはサッカーしたことある?」
「うん。私、サッカー部だよ」

守の瞳が大きくなった。どうやら守もサッカーが好きらしい。私は周囲の影響で始めたが、サッカーをしている事に感謝する日が来るとは思わなかった。

「本当か!?女学院なのにサッカー部あるのか!?ヒロトもサッカーするんだな!?」

まくし立てた守はキラキラした瞳で私をみた。こんな病弱そうな肌色じゃ、サッカーするなんて思わないよね。

「一応、名は通る学校だよ。知らないで入ったの?」

「ああ、親の都合だったし、サッカー部なければ作るつもりだったからさ!」

笑う守は本当に嬉しそうで、私まで嬉しくなる反面、サッカーに嫉妬しそうになった。

それほど彼女は魅力を持っている、人を惹きつける魅力。私はそんな円堂守ちゃんと友達になれて嬉しい。素直に欲を言ってしまえば、それ以上も望んでいる。

気付かれないよう唇を舐めれば、揺れるツインテールがうさぎの耳にみえた。逃がしてあげないからね、私のうさぎちゃん!

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -