いかける
:先にいるもののもとに行こうと急ぐ



僕がどれだけ早く走っても、風になっても、きっとキャプテンには追い付けない。

走っても、走った分だけまた距離を感じるから

『キャプテン』

『おおっ、どうした吹雪』

ボールを持って練習をしようとするキャプテンを呼び止めた。

『シュート練習に、付き合って欲しいんだ』

『勿論いいぞ!』

キャプテンは直ぐ様返事をした、優しい。

『じゃあ行こうぜっ!』

そんな事を思っていたら、キャプテンはサッカーゴールに駆け出して行った

『(あっ)』

これだ、僕が追い付けない理由

キャプテンは留まる事を知らない

ゴールキーパーをしていても、いつの間にか僕の隣まで来てシュートを決めたり。

『自由な人』

リベロ、きっとキャプテンの為に作られたポジションだ

ザクザクとスパイクで砂を踏みながら、僕もキャプテンの後を追い始めた

『吹雪ー!急げ急げー!』

ゴール前でキャプテンが跳ねながら手を大きく振っている

『うん!』

僕も歩くのを止めて全力で走る、少しでも速く、キャプテンの元へ行くため

『っはぁ、』

思ったより長い距離だったから、少しだけ息が切れた

『やっぱり吹雪は風みたいだな!』

『本当?』

『ああ!ビューンって行って、ビシッてシュートを決めた時は、本当に風みたいなんだ!』

『キャプテンにそう言われると嬉しいなぁ』

ふわふわ笑えば、キャプテンもつられて笑った。

『だからさ、俺も吹雪に負けないように頑張ってるんだ!』

『?僕に負けないように?』

『風はすぐどっか行っちまうだろ?どっか行っても、俺も追い付けるようにしたいからな』

キャプテンは笑っている、僕はきっとにやけて変な顔をしているに違いない

『僕はキャプテンを置いて行かないよ』

『そうか?』

『勿論だよ、…でも、』

ざわざわと校庭を風が走り抜けた

僕はその風を見送ってから、キャプテンを向いた

『キャプテンが僕を追いかけてくれるなら、風になってもいいかもなぁ』

『1人で風になるより、2人で風になって行く方が楽しいだろ、だから、吹雪が1人でどっか行くなら、俺が手を繋いで一緒に行くぜ』

キャプテンは僕なボールを渡した

『さ、練習しようぜ!』


キャプテンを追い掛けて、いつか隣に並べたら、その時は手を繋いでもいいかな?

受け取ったボールは、いつもより鮮やかにみえた。




 
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テーマ「人外ファンタジー」
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