がれる
:一途に恋慕う


『風丸ー!』

少し肌寒くなった季節、マフラーを鼻まで上げながら背後からの声に振り返れば、そこには走って来る幼馴染みの姿


『円堂、どうしたんだ?』

隣まで走って来た円堂は、僅かに息を荒げながら、人懐こい笑みを浮かべた

『雷々軒、行こうぜ!』

『さっきマネージャーの差し入れ食ったばっかりだろ?』

『それでも腹減ったんだよ』

確か円堂は壁山と張り合っていたような気がするが、そんな事を思っていると、制服からガサガサと何かを取り出した

『それに、割引券貰ったんだ、一緒に行こうぜ!』

『是が非でも行くだろ?』

円堂から誘われたんだ、断るわけがない。

『ああ!』

ニカっ、と笑った円堂は早足に雷々軒へ向かって行く

『早く行こうぜ!』

『ああ、』

1歩後を着いていく、円堂の踏んだ所を合わせてみたりしながら

『風丸と2人で帰んの久しぶりだな』

急に円堂が振り向いたから、俺は足を止めた

『あ、ああ、そうだな』

『小学生の頃は、毎日寄り道しながら帰ってたよな』

ああそうだ、円堂の好奇心にいつもいつも付き合っていた

『鉄塔に初めて登ったのも、帰り道だったよな』

『そうそう!俺の帽子が落ちて、風丸が拾ってくれたんだ』

『はは、円堂が泣くからだろ』

小さい頃は、無鉄砲で好奇心旺盛な円堂をサポートする毎日だった。

『風丸に助けられてばっかりだな』

円堂が歩く速度を遅めて、また俺たちの影は重なった

『そんな事ない、俺だって円堂に助けられてる』

真実だ、陸上を辞めてサッカーを始めた不安も、円堂がいたから乗り越えられた。

『俺、風丸が居てくれて本当に良かった』

オレンジのバンダナが眩しい

『…なぁ円堂、俺、本当は面倒くさい事嫌いなんだ』

『え?』

『でも、円堂だから面倒じゃなかったんだ』

円堂に言い残し、今度は俺が歩幅を広げた。

きっと俺の顔は赤い、精一杯の気持ち

円堂が気付くと期待はしていない、気付いてくれるなら嬉しいが。

気付かないままでもいんだ、それでも俺は焦がれ続けるから。

小さい頃から想っている、今さら諦めるなんて出来ない


円堂の足音が聞こえた、さあ、返答は?





 
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