:他人の所有するものを無理に取り上げること



ぐちゅぐちゅと音を立てて心臓が破られるような感覚と、アフロディの優しい羽根が頬や瞼を撫でる感覚が入り混じる

心地よいのに逃げ出したい、心地よい位に逃げ出したい、矛盾が気持ちいい微睡みの白昼夢のようだ


「本当はね、五感も腕も足も内臓も綺麗な瓶に入れてリボンをつけて保管したいけど、円堂くんの心臓が動くのが今は嬉しいからそれはまだ先にしようね?」


まるで俺を人形のように扱うアフロディと、ミチュアのような部屋に本当に自分が人形になった気がする。

可愛いらしい壁紙に、天蓋付きのベッド、カーペット、ソファーにぬいぐるみ、女の子のような部屋だが、アフロディには似合っていた。アフロディの為の部屋なんだと理解する

「ああ、喉が乾いたね、使用人に持って来させるから、少し待っていてね」

俺を抱き締めていたアフロディはゆっくりと俺をベッドに寝かせると可愛らしい部屋から出て行った。

天蓋の上からは星がぶら下がっていた。細部まで拘りのあるミチュアハウスのようだ


「……」

ぼんやりと天井を眺めて、アフロディが此処に連れて来た日はいつだったかを思い出す

「きみは此処にいなくちゃいけない、外に出たら汚れてしまうから、此処なら安全だから、言うことを聞いてね」

アフロディの綺麗な紅い瞳が真剣で、此処から出る選択肢は亡くした。

ゆっくりと息を吐いて部屋を見渡せば、急に違和感を感じた。

「…?」

上体を起こして部屋を見渡す。ピンク、黄色、赤色、白色、紫色、オレンジ色、緑色、小物やソファーには様々な色が使われているが、不自然なほどに青色がない

「あお、」

ポツリと呟いた脳内に鮮やかな青が浮かんで消えて、また薄く浮かぶ

あお、青、アオ

「…かぜ、まる、風丸…風丸!風丸っ!」

今まで抜け落ちていた青の存在が頭いっぱいに広がる、アフロディが此処に連れて来る前、アフロディは風丸を、青は赤になって、意識がなくなって、それで、風丸は

割れそうになる頭を抱えていると、背後から抱きつかれた。金色の髪が視界に入る、鳥肌がたつ

「あ、アフロディ」
「だめじゃないか円堂くん、またやり直しだ」

綺麗に笑うアフロディに歪む視界、飲まされたのは甘過ぎる毒

風丸をアフロディは、アフロディに風丸は

ぐちゅぐちゅと心臓が引き裂かれていく、羽根が舞う中で笑うアフロディをみたのを最後に、意識は闇に落ちた


 
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