Target》吹雪



最近、キャプテンの様子がおかしい

何処が、と聞かれても詳しく説明出来ないが、僕はその"違和感"を知っている

『キャプテン』

『どうした?吹雪』

休憩中、キャプテンの隣に座って話をしようと顔をみた。

やはり違和感、キャプテンの瞳は澄んでいたのに、今は濁っているように感じる。

『キャプテン、疲れてるんじゃない?大丈夫?』

『…、疲れてるように見えるか?』

キャプテンがドリンクを置いてこちらをみた

『…う、うん』

なんだ、なんだろう、この違和感

キャプテンなのにキャプテンじゃない

『そっか、じゃあそうかもしれないな。』

キャプテンはそのままベンチを立って、またグランドへ戻った。

『…どうしたんだろう、キャプテン』

ぽつりと呟いた言葉に、風丸くんが反応した

『どうかしたか、吹雪』

『風丸く、』

振り返ると、風丸くんもドリンクを飲んでいた。

でも、やっぱりその瞳は濁っている

『…何だ?』

僕が見すぎたせいで風丸くんが不審そうな顔をした

『う、ううん、何でもないよ』

おかしい、キャプテンも風丸くんも

『(僕はこの違和感を知ってる)』

僕もドリンクを置いてグランドへ駆けようと足を踏み出す

『なぁ吹雪』

一歩踏み出した所で風丸くんに呼び止められる

嫌な汗が背中を流れるようだった

『…な、に?』

『お前は円堂が大切か?』

ゆっくり振り返ると、風丸くんの瞳はさっきより濁っていた。

冷たい冷たい冷たい冷たい瞳

『…、大切だよ、誰よりも』

寒い所にいた僕を暖めてくれた人

『そうか、引き止めて悪かったな』

風丸くんはドリンクを置いてグランドへ消えた。

『…ううん、』

その背中に返事をして、僕は立ち尽くした。

キャプテンと風丸くんの違和感、それに気付いたらいけない気がした

気付いたら、戻れない。

今はない、首元のマフラーに手を伸ばす。

『(敦也、)』

『吹雪』

背後から掛けられた声にビクリ、と肩を震えさせてしまった。

『ど、どうしたのキャプテン?』

動揺を悟られてはいけないキャプテンはじっ、と僕の瞳を見つめた。

いつもなら感激するが、今日は恐怖しか感じない


『気付いてるんだろ?』

僕の瞳から目を反らさないキャプテンが尋問するように問いかけた。

『な、にが?』

キャプテンはゆっくり瞬きをした、次の瞳は、完璧にキャプテンとは"違う"人間だった。

『"俺"の存在に』

キャプテンに感じた違和感、それは、"キャプテンじゃない人格"がキャプテンの中にいたこと

僕は敦也を自分の中で形成した、きっと同じようにキャプテンも"もう1人"を作ったんだ

『ねぇ、どうしちゃったの、キャプテン』

僕が吹雪士郎になったのはキャプテンのお陰だ

『僕はどんなキャプテンでも認めるよ、ねぇ、キャプテンどうしたの』

僕が"敦也"を作ったのに理由があったように、キャプテンにも理由があるに違いない。

『疲れたんだよ、お前が思う"円堂守"は"円堂守"でいるのに。』

別人のキャプテンはキャプテンの顔で正反対の事を言う

『キャプテン、キャプテンは僕を認めてくれた!だから僕はキャプテンが『だったら』

キャプテンは僕を征した、怖い

『"俺"を認めろよ。"円堂守"がそれを望んだんだから』

キャプテンが望んだ?

『嘘だ、キャプテンがそんな事言う筈がない』

『お前たちのその押し付けが"円堂守"を苦しめたんだ』

僕たちがキャプテンを苦しめた?

力が抜けて地面に膝をついた僕に、もう1人のキャプテンは肩に手を置いた

『"俺"はお前たちが作った"円堂守"が作り上げた"円堂守"なんだ。……吹雪は、俺を認めてくれるだろ?』

僕がキャプテンを苦しめた、僕はキャプテンを守りたかったのに。

キャプテンは僕の太陽なんだ、太陽があるから僕は生きてる。

太陽がいなくなるなら、僕は生きる意味がない。

頷くと、急に身体が軽くなった。

そっか、僕はキャプテンが好きだから、どんなキャプテンになっても僕はキャプテンが好きなんだ

顔を上げるとキャプテンはいつもの笑顔で笑った、僕が大好きな、太陽みたいな笑顔

『サッカー、やろうぜ』

太陽は太陽なんだ、例え、明るい光じゃなくても。





(黒い太陽)
吹円と言い張る

過去拍手お礼文章でした。

  
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