笑む
:声をたてずににっこり笑うこと




円堂はよく笑う。見ているだけでこちらも笑顔になるように大きな口を開けて笑う。

そんな円堂を周囲は当然ながら明るく元気なサッカー少年と認知し、愛している。


「かぜまるうー、勉強やめてサッカーしようぜ?」

円堂は数学が苦手だ。図書館でテストに向けて勉強すれば、5分で勉強が嫌になったらしく逃げ道を探し始めた。

「駄目だ。この範囲が分かるまでは図書館から出さないからな」
「それは1日じゃ無理だな!」
「諦めないのがお前の信条だろ」

頬を膨らませる円堂が可愛くて許したくなるがここは我慢だ、心を鬼にしなくては

不服そうな瞳を無視して参考書を開けば唇を尖らせたままではあるが、渋々円堂も数式に向き合った。

円堂は案外飲み込みが早いから、根気よく教えればすぐに覚える。それを幼なじみだから知っている俺は、みんながお手上げの数学をやっているのだ。

図書館に2人というシチュエーションは悪くない。普段では絶対に有り得ないこのシチュエーションは親衛隊のイケメン部類は部活がないなら!とファンに引っ張りだこにされたからだ。人混みに揉まれながらも円堂だけ連れ去った疾風DFまじGJ!

「X=3を代入して」
「成程!こうか?」
「そうそう、出来るようになったじゃないか」

数式に慣れた円堂は1人でも問いていく。不服そうな表情は一変して、サッカーをしている時には劣るが、それでも顔には笑顔が浮かんでいた

「サッカーもいいけど、たまには数学もいいんじゃないか?」

頬杖をついてからかうように尋ねれば、円堂は視線をこっちにやった。

「風丸が教えてくれる数学なら、たまにならやってもいいけど」

「!」


口元をノートで隠しながら挑発的に微笑む円堂の表情はレアで、普段はそんな表情みせないのに殺し文句と一緒に投げやるなんて円堂には、本当に、適わない。

「…そうか、」

赤くなった頬を誤魔化すように仰げば、円堂はまた微笑んだ。



 
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