躇う
:あれこれ考えて迷うこと



どんな言葉をかけたらいいのか、たまに迷う。

重たい言葉はあの羽根に傷をつけてしまうし、軽い言葉はあの白く輝く羽根を汚してしまう。

そもそも、会話をする事が許されるのだろうか。優雅な口調で響くような声をもつ彼に、グラウンドを駆ける俺の声を鬱陶しく感じてはいないだろうか。

『なにか考えているようだね』

長い睫毛に縁取られた宝石みたいな瞳に俺は写っていいのだろうか。

『…』

何と言っていいか分からず口をパクパクさせる。醜い金魚のような俺を嘲笑するだろうか。

『ねえ、君は僕を神様だと言うけど、僕は君が考えているような人間じゃないんだよ。』

白磁の指が伸ばされ、優しく瞼に触れられる。暖かい温度に身を任せれば、頬に風を感じた。

『僕は君が思っている聖人なんかじゃないよ、だって、こうして無防備な君に善からぬ感情を抱いている』

うっすら瞼を持ち上げると、紅い瞳は優しく、けれども獣のようにギラギラしていた。

獣の牙のような視線に目を背けようとするが、それは阻まれてしまう。両頬を優しく掴まれ、逃れられなくすると、彼は顔を近付けながら懇願するように囁いた。


『名前を呼んで』

優しく笑うものだから、いままで喉につっかえていた言葉が溢れ出た。

『てるみ、』

躊躇う事を止めて名前を呼べば、照美のくちびるが優しく触れた。





 
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