い出す
:記憶を呼び起こすこと



『あ、髪下ろしてる』

円堂が何気なく口にした言葉に、少し心臓が痛んだ。

終わりがみえない戦いに恐怖を覚え、俺は逃げ出して円堂を裏切った。最低な事をしたのに俺は許してもらって未だに隣にいる。

『変な顔してるぞ風丸、DEのこと思い出してるんだろ』

『えっ』

円堂は俺の髪に触れると不器用に一つに纏め始めた。

『…風丸がいなくなった時は不安だった。キャラバンで遠くに行っても風丸がいたから安心できたんだと思う』

思い出すように呟きながら円堂が髪を撫でる。不器用なのに優しい指先に俺は身を任せる。

『風丸がDEとして出てきたとき、もし俺が1人だったらきっと風丸に着いて行ってた。それくらい、…』

中途半端な高さに結ばれた髪を撫でながら振り向けば、円堂は恥ずかしそうに口を一文字に結んでいた。

『…それくらい、何だ?』

態と分からないふりして聞けば、円堂は顔を真っ赤にして、かと思えば俺の頭を叩いて行ってしまった。

『好きだっ、ばか風丸』

『あ!まてよ、円堂!』

耳が赤い円堂の背中をみて、髪が崩れないように円堂を追い掛けた。





(お待ちなさい)
2011.09/01

 
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