寂しがる
:人がいなくて心細いこと
キャラバンの中で眠るのは皆の寝息がして最初は慣れなかったけど、今は少し嬉しさを感じるようになった。
でも、やはりみんなにはいずれ帰る宿がある事を想うと心の隙間はまた開いてしまいそうなのも確かだ。
眠れなくなり、上体を起こして辺りを見渡すと、皆ぐっすりで寝相やイビキなど個性的で思わず笑いそうになった。
そこで、一人足りない事とキャラバンの上から音がする事に気付く。
『(起きてるのかな)』
足音を立てないようにキャラバンを降りて梯子に手をかける。
『だれだ?』
頭上からの小さな声は間違いなくキャラバンにいなかった人の声で、僕は黙って梯子を登った。
『ごめんね、起こしちゃった?』
『吹雪!』
やはりキャラバンの上にいたのはキャプテンで、キャプテンも起きていたらしい。
『眠れないのか?』
『キャプテンこそ、寝ないの?』
『なんか寝付けなくてさ』
2人で寝転んでもまだ広いキャラバンで僕たちは星を見上げた。
『…北海道の星って、綺麗にみえるよな。』
『空気が冷たいからかな?僕は東京に行った事がないから分からないや』
小学校で習ったような記憶はあるが如何せん曖昧だ。使わない数式を次々忘れていくようなものだろうか。
『空が広いからどこをみていいのか分からなくなる』
キャプテンをこっそり盗み見ると、大きな瞳をいっぱいに開いて全ての星を見ようとしていた。
しかし、そんなキャプテンでもきっと視界に入らない星がいるのだろう。そいつはきっと僕に似ている。たくさんの中に溶け込んでもやっぱり1人ぼっち
『…吹雪?』
ぽた、と屋根に落ちた涙は思ったより大きな音を立てた。
『どうしたんだ?大丈夫か?』
『大丈夫、大丈夫だよキャプテン。だから星をみて、見落とさないように、星をみて』
キャプテン困った顔をして毛布で僕の涙を吸い取った。
『うーん…1人じゃ広くてみれないからさ、2人でみようぜ?それなら見落とさないだろ?』
キャプテンはそう言うと再び寝転んで星をみた。大きな瞳には、うずくまる情けない顔をする僕も写っていて少し恥ずかしくなった。
『…ありがとうキャプテン』
涙でぼやけるけど星空が綺麗すぎて、泣き止まない寂しがり屋で情けない僕の手を、優しく握るキャプテン
きっと2人なら見落とさないね。僕は泣きながら笑う変な顔で強く握りかえした。
(キラキラシャワー)
2011.09/01