れる
:瞬間的に軽くくっつくこと



『円堂くん、良かったらどう?』

ヒロトが差し出したのはペットボトルで、外との気温差から汗をかいていた。

『いいのか?』

ヒロトは2本ペットボトルを持っていて、そのうちの1本を俺にくれるらしい

『うん、自販機で当たったんだ。2本も飲めないからさ』

『すげえ!ついてるな!ありがとな、ヒロト』

ペットボトルを受け取ると、さっきまでグラウンドを走り回っていた体が冷たさを感じた。

プシッ、という炭酸が外へ出る音と、爽やかな匂いが聴覚や嗅覚を刺激する

喉に通すと、ピリピリしたような感覚が体を通るのが分かった。

『円堂くんは炭酸好き?』

『好きだよ、ヒロトは?』

ヒロトが飲んでいるのは違う味の炭酸で、俺が答えると少し照れたような表情をした。

『俺も好きだよ』

言葉を一つ一つ噛み締めるようにヒロトが言うものだから、誤魔化すように炭酸を流し込んだ。

『そっか』

『うん』

少しだけ、間が開いたが、ヒロトはすぐに言葉を続けた

『円堂くん、そっちのも一口貰っていいかな』

『もちろん、元はヒロトのだからな』

そう言って差し出せばヒロトは大切そうにペットボトルを握り、炭酸を流し込んだ。

俺の手にはヒロトが飲んだペットボトル、爽やかなパッケージが印象的だ。


お互いに少し飲んでから、また元に戻した。

ヒロトは心なしか口元が緩んでいて、俺はペットボトルを握る指に力を込めた

『そっちも美味し『キスしたいなら、言えよ』

真っ赤なヒロトに少し背伸びしてキスをしたら、ヒロトは面白いくらい顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。

そんなヒロトが面白くて笑うと、ヒロトも笑った。

太陽の光がシュワシュワしてて、ペットボトルの中にいるみたいだった。

『円堂くん』

『ん?』

ペットボトルの蓋を閉めたヒロトはこちらを向いて、またゆっくり喋った。


『キス、してもいい?』


俺はゆっくり瞼を閉じた。




(野暮な事を聞かないで!)
2010.07/24


 
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