自惚れる
:実際以上に自分がすぐれていると思い込んで得意になること。
キング・オブ・ゴールキーパーの称号を持つ俺はいつだって崇められていた。
同学年の他のやつらより身体がしっかりしていたのも原因だろうし、帝国学園のサッカー部員という最大の称号まで揃っているのだから、俺の周りには必然的に同じ部類のやつしかいなかった。
それでいいと思っていた。
崇められるのは嫌いではなかったし、優遇されるのは優越感と支配欲が満たされたのだ。
『源田!』
しかし、円堂に出会ってからは俺があまりに無知であったことを知った。
今までは空調や芝が管理された施設の中でしていたサッカーが、円堂と外ですれば、デコボコしているが、しっかり支えてくれる大地や、空調がなくとも風が汗を癒やしてくれることを知った。
円堂は俺に色々なことを教えてくれた
『源田って身長が高いよな!』
『あ、ああ、普通の人よりはな』
ある日、同じキーパーだからと一緒に練習をしていたら、そんな事を言われた。
『じゃあ、グランドが広くみえるだろ?あー!俺も身長高くなりてぇ!』
『…そんな事はないぞ』
『そうなのか?』
自分の目線からみた世界はあまりに小さく、自分が王になったように錯覚していたのだ。
自分より小さい円堂には世界が広くみえていたのか、そこまでは分からないが、円堂はきっと世界を探検しているのだ
『ああ、でも円堂は大きくても変わらないだろうな』
だから、世界を探検していた途中に井戸を覗き込んで、そこにいた俺に世界をみせてくれたんだ。
『んー、でも』
円堂が渋るように考える顔をしたので、気になって顔色を窺う。
『どうした?』
『源田は背が高いからさ、俺も同じ高さで景色をみたいと思ってさ!』
にかっ、と彼特有の笑みをみせると、円堂は空へ伸びをした。
同じ景色がみたいというのは、俺と並ぶという事でいいのだろうか
『なあ円堂、』
『…』
伸びた円堂は一変して俯いていて、その様子をしばらく見ていると、耳が赤くなっているのを発見した。
どうやら自惚れてしまっていいらしい。