れる
:いっしょにいたものが離ればなれになること




自分の中にいた敦也とサヨナラをした日、僕は自分が見てきた世界がやっと回りの世界と重なった事を知った。

今までだって、回りからすれば1人だったけど、心に敦也がいたから僕からみる世界は1人じゃなかった。

キャラバンの空いた席には敦也が大口を開けて寝ていたし、休憩時間はガブガブとドリンクを飲んでいた。

でも、今は、

自分の世界から出て、世界を他人を共有するようになってから、景色が全く違う事を理解した

大口を開けて寝る敦也は元からいないけど、本当にいなくなって…

マフラーがない首元が苦しくなって、胸元を強く握った。

僕は1人で世界を生きなければならない辛さを改めて感じた。

祝ってくれたみんなには兄弟も両親もいるけど僕にはない

敦也、敦也、助けて……やっぱり世界は苦しいよ…

最初に敦也が現れた日のように、強く念じてみた

ねえ敦也、助けて、1人は、1人で生きるには…

何度話掛けるが、敦也は答えてくれなかった

こんな広い世界に1人ぼっちで生きるのは無理だよ、泣きそうに敦也の名前を呼ぶ前に、肩を掴まれた。

『あつ、や?』

『士郎』

掴んだのは敦也じゃなく、キャプテンだった。

士郎、とキャプテンは再び名前で呼んだ。

『キャプテン…』

キャプテンは静かな表情をしていた、咎めるでもなく、慰めるでもなく、同情でもない

『士郎』

3回めに名前を呼ばれて、僕はキャプテンに抱き着いた。

『キャプテン、キャプテン!!僕っ…!』

ぼろぼろと涙が止まらなかった、ユニフォームが濡れるのも気にせずキャプテンは頭を撫でてくれた。

世界は広い、でも、キャプテンよりは狭いみたい

だって僕の視界にはキャプテンのユニフォームしか映らないから

『敦也はもういないけど、俺はここにいるからさ』

『……うん、ありがとうキャプテン』

敦也、君がいない世界は広いけど、少しだけ、距離が縮まったよ

ゆっくり心に伝えると、敦也が笑った気がした。




 
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