彼をみた瞬間、喉が渇き、本能が渇望したのを感じた。

それは餓えに似ている、砂漠の獣が血を求めるように、己も彼を求めていた


『エンドウ』

『ビヨン!』

練習の休憩中、各自好きなようにしていたので、私はベンチに座っていた円堂の元へ歩いた

『さっきのシュート良かったぞ!』

『ありがとうございます』

隣に腰を降ろすと視線を感じたが、無視をした。

今日は日射しが強いから、彼はいつもより多めに水分を補給している。

ごくりごくり、私のと比べれば白く細い首が上下に動く


『ビヨンも飲むか?』

私があまりに見すぎていたのだろう、円堂がスポーツドリンクの入ったボトルを差し出した

『…いいえ、先程済ませたので』

『そうか?』

ぐびっ、と再び大きな音を立てて水分が彼へ吸収された


『…エンドウ』

『ん?』

『獅子は獲物を仕留める時、首筋に噛み付くのです』

円堂はボトルを口から離した。

『ああ、テレビで見た事あるぜ!しまうまとかに噛み付くやつ』

彼は捕食されてしまう側だというのに、無防備に首筋をさらしている。

目の前に御馳走があるのに食べられなかったから、私の喉は渇いていたのだ

ならば話は早い

『エンドウ』

『なん、っ!?』

彼がこちらを向く前に、私は少し屈んで彼の首筋に噛み付いた。

『ビ、ビヨン!?』

慌てて私の肩を掴んで剥がそうとするから、私は野生のそれと同様に強く噛んだ。

『っ、た…!!』

びくり、と震えた肩にある円堂の手の力が弱まった。

血を吸っているわけではないのに、満たされる気がした。

『…』

満足して首筋から離れ、最後にペロリと噛んだ所を舐めると細い四肢が震えた

円堂は顔を真っ赤にしながら、私を見た。

私は彼の手から落ちて地面に転がり、水溜まりを作っているドリンクを少し眺めて、彼に問い掛けた。



『水分でも癒えない渇きは、どうすれば良いのでしょうね。』

ペロリ、と舌を見せれば、円堂は首筋を守るように触れた。




(首筋に噛み付け)
2011.3/4


 
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