『邪魔だよ』
『何を言っているのか、分からないな。』
バチバチッ、と火花が散ったのを円堂はみた。
自分を挟んでいるのは、亜風炉照美とミストレーネ・カルス
どちらも少女のような容姿を持つ、美少年と言われる部類の仲間だ。
『僕の方が円堂くんとの時間が長い、だから諦めてその手を離したまえ…!!』
『フン、時間がないと自信がないのかい?そんな弱虫は早く手を離したらどうだい?貧弱な腕が折れるんじゃない?』
ギギギ、グググ、左右に腕が引っ張られ、脱臼しそうだ
『…あのさ』
せっかくの休日なのだから、早く行動したいのだが、2人は睨み合ったまま動かない。
『何だい円堂くん?少し待ってね、この女男を直ぐに片付けるから』
『そっくりそのまま返すよ、女男』
『品がないな』
『どっちが』
本日2度目の火花が散った。
『円堂くんに相応しいのは僕だ』
『自惚れも大概にしなよ、負け犬』
麗しい少年が両手にいるが、背後には蛇や龍がみえる
円堂は限定シューズが欲しかったのだが、この調子では目的は達成出来ないだろう。
『僕の方が、円堂くんを愛している』
『俺はその倍』
『僕はその倍の倍の倍』
『俺は倍の倍の倍の倍の倍の倍』
倍の倍の倍の倍の…、エンドレスに繰り返される言葉に、円堂はようやく行動を起こした。
『なあ、』
『『何!』』
ぐりん、とこちらをみた鬼のような形相の2人
円堂はそんな2人の手を強く握り、本日1番の笑顔をみせた。
『俺は2人共、その倍の倍の倍好きだから、3人で買い物行こうぜ!』
呆気にとられている亜風炉照美とミストレーネ・カルスを引っ張りながら円堂は目当てのスポーツショップへ歩き出した。
『…、今回は引き分けたけど、円堂くんは僕がいただくよ。』
『こっちの台詞だね』
円堂に引かれながらも睨み合う2人だったが、本人は少し楽しそうに笑った。
(男の娘サンド?)
20110227