アフタヌーンティーのスコーンは、上手く焼けた。

時間に余裕を持って行動するのは紳士の嗜みだが、今日だけは余裕分の時間が邪魔に思える。

『(早く)』

庭園の薔薇は見事咲き誇り、ベンチは白く輝いている。

エドガーは一輪の薔薇に優しく触れると、唇を落とした

『…こうも焦っていては、紳士失格ですね』

薔薇に苦笑してから、背筋を真っ直ぐに伸ばすと、視線を感じた。

そちらを向けば、いつ到着したのか思っていた人物が立っていた。

『待っていました、会えて嬉しいです。』

そちらに歩むと、円堂は少し照れたような仕草をした。

『あ、ああ!俺も嬉しいぜ』

何処か不自然な態度に少し首を傾げる

『どうしましたか?』

『え?』

『動きが不自然ですよ』

そう言ってみれば、あからさまに慌てる円堂

『な!何でもない!ほら!紅茶!紅茶淹れてくれよ、俺すげー楽しみでさ!』

『ええ』

白いベンチに逃げ出す円堂をゆっくり追い駆ける


聡いエドガーは、円堂の後ろ姿をみて気付いた

『(あの反応は)』

ちらりと先程唇を落とした薔薇をみて、エドガーは少し口元に笑みを浮かべた

『エンドウ』

『どうし、』

彼が振り向いたと同時に、薔薇に劣らない色の唇に自らを重ねた。

『!』

驚いて瞳を丸くする円堂をみて、心が暖かくなった。

『愛していますよ、』

『あ、ああ!俺もだ!』

頬を真っ赤にした円堂は宛ら薔薇のようだった。

薔薇にキスをしたのを見たのだろう、そして薔薇と自分を重ねたからあれ程動揺したのか


エドガーがクス、と笑ったのをみて円堂は自分の考えが読まれた事に気付いた

『(でも、あんな顔でキスをすれば)』

エドガーが薔薇に落とした口付けは、自分にしてくれるものと同じものだった

普段からあんなに優しい顔をしてキスをしていたかと思えば、恥ずかしくもなるのだ。

いつになく上機嫌なエドガーに円堂も嬉しくなった

自分も、あんなに優しい顔でキスが出来ていたらいいな、と小さく笑った。





(秘密薔薇庭園)
2011.2/27
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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