血液血液血液 



「円堂守、面白いものをみせてあげよう」

退屈だ、とソファーに寝そべって何回も読んだサッカー雑誌に目を通していると涼野が手招きをしていた。

「面白いもの?」
「ああ、私にしかできないものさ」

涼野がにんまりと笑うのが珍しく、俺はぐしゃぐしゃになった雑誌を放り投げて涼野に近付いた

「私の部屋に行こう、見つかったら厄介だ」
「みんなに見せたらだめなのか?」

手を繋いで涼野の部屋に向かう。涼野の腕はとても冷たくて、生きているのか疑いたくなった

「私たちだけの秘密だよ、守れるね?」
「…、ああ!」

念を押した涼野に少し怖じ気づいたが、淡白な男が面白いというものが気になり俺は頷いた。頷いた俺をみてから涼野は部屋の扉を開けた。

簡素な部屋だ。綺麗に整理されているようにみえるが、最初から動かされていないようにもみえる。生活感が全くない部屋である。この部屋のどこに面白いものがあるというのだろうか


「なあ面白いものって、!」

部屋を見渡したがそれらしいものが見つからず、俺は後ろを振り返った。背後の光景に言葉が詰まった。涼野が自らの白い腕にカッターで傷を付けていたのだ

「何やってるんだ!」
「ほら、」

カッターを涼野の腕から取ろうとしたが、涼野はそれを制して切り口をみせた。見たくなかったが、目が離せない。

涼野に流れる血液は真っ青だったのだ。

「面白いだろう?」


ふふ、と笑う涼野は俺の反応を楽しんでいる。鉄の匂いは同じなのに、血は真っ青、しかも粘着質でドロドロしている。涼野の腕を伝い床に落ちるまで、スライムのようにゆっくり落ちるのだ。

「大丈夫、なのか?」


「私は水星の生まれでね、地球人の母さんと水星人の父さんの間に生まれたんだ。しかし当然許されるはずもなく、殺されそうになった所を私は地球に隠されたんだ」

涼野はぼんやりと血液をみながら、俺の質問には答えなかった。固まった俺をみた涼野は傷口をゆっくり舐めた。すると傷口はあっという間に塞がってしまい、また白い腕に戻ってしまった。


「XXいXXう?」

少し青くなった唇で涼野が言葉を発したが、俺の喋る言語ではなかった。しかし、なぜか意味は分かった。俺はゆっくり頷いて、今涼野が使った言語で返事をした。


ピジン・クレオール

 
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