アンケート3位「純粋一途基山」
ジワジワ、ミンミン、好き放題に鳴く蝉にグラウンドは蜃気楼に揺れる。暑さで歪んでみえる景色でも、真ん中に立つ円堂くんははっきりと存在していた。
「暑いなあ」
暑さに弱い身体を木陰で休ませる。練習を止めるわけにはいかないからこっそり抜け出した。木陰はほんの少しだけ涼しかった。あまり変わらないにしろ、炎天下の元サッカーをしている円堂くん達よりは断然、涼しいに違いない。
座っているだけで噴き出る汗が少しだけ不快だ。ユニフォームの袖で拭うが、既に汗を吸っているからか意味はなかった
「円堂くんは元気だなあ、もしかしたら夏の生き物かもしれない」
誰もいないのを良いことに独り言を呟く。夏の生き物という比喩は考えなしに出て来たものだが、意外としっくりきた
「夏の生き物だからあんなに眩しいのかな」
オレンジ色のバンダナは太陽に負けないくらい眩しいから、たまに目を背けたくなる。きっと肌が白い俺はきっと冬の生き物で、夏の生き物である円堂くんが眩しいのだ
1人で微笑むと、木陰にいる俺に気付いたのかグラウンドの端から円堂くんが駆けてきた。やっぱり円堂くんが眩しくて、少し目を細めた。
「大丈夫かヒロト」
「うん、少し暑くて」
木陰にいた分汗はひいた。炎天下にいた円堂くんは全身から汗が噴き出ている。汗すら眩しく思えてしまう
「保健室に連れて行こうか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
コートに残されたみんなはこちらを窺っていたが、鬼道くんの号令でまた練習に戻った。
「大丈夫ならいいけど…、無理するなよ」
「うん、心配かけてごめんね」
勿体無いんだ円堂くん、夏の生き物はとてもキラキラしているから。輝きを焼き付けるには目を開いておかなきゃならない。冬の生き物の俺には少し眩しくて立っていられない時もあるけど、
「じゃあヒロト、サッカーやろうぜ!」
それでもずっときみを見ていたいんだ。
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お花畑になり損ねたので、純粋一途基山でした