ミストレーネ・カルスは頭を抱えたくなった。端正にできた絶世の美少女すら泣かすことも可能であろうその顔は、戸惑いと腹立ちを頭を悩ませる原因の可愛らしい無防備な寝顔に向けた。
「なんで部室で寝てるわけ」
ミストレは眠っている円堂守の寝顔に悪態をつく。そんな悪態すら眠っている円堂には届かない。
「だいたい、お前の周りにいる野郎はみんな下心を持ったやつらなんだから、こんな所で無防備に寝たらどうなるか分かったもんじゃないだろ、いくらサッカー馬鹿でもさぁ!」
部室にあるベンチに猫のように丸まって眠る円堂を起こそうと伸ばした腕をミストレは止めた。
「…むかつく」
円堂があまりにもすやすやと気持ち良さげに眠るのをみると、ミストレが伸ばした腕は起こすのを嫌がった。
「馬鹿じゃないの、無防備にしてさ」
起こす為に伸ばした腕、指先でミストレは円堂の唇に触れた。これだけでは起きないことは重々承知している。
動きもしない瞼をぼんやりと眺めながら、指先で唇を往復させる。少しだけカサカサだが、ぷっくりとしていて美味しそうな唇に、ミストレはごくりと生唾を飲んだ。
「…起きないと、キスするよ」
とんでもない命令であった。起きないことが明確であるのに、とミストレは自分に苦笑する。
しかし、どういう事がミストレの言葉に円堂の瞼が僅かに動いた。
「起きてるだろ」
「…寝てる」
円堂は堅く瞼を閉じたまま、口を開いた。狸寝入りをしていたらしい。ミストレはそんな円堂の額にデコピンをして言葉を続けた。
「起きないとキスすんぞ」
「…寝てる」
寝てる、しか言わない円堂
「起きないとキスするって「寝てたら、キスしてくれるんだろ?」
今度は大きな瞳を少しだけ伏せながらこちらを見上げた円堂に、ミストレはやられた、と思った。
やれれるだけではつまらない、ミストレは円堂に出来るだけゆっくりと顔を近付けた。
「キスする時は目ェ閉じろよ」
「はーい」
大人しく瞼を閉じて口元を少し緩ませてキスを待つ円堂に、ミストレはとびきりのキスを円堂にしてやった。
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想花さまへ相互記念小説です!
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