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エクレアのうにさんから!



まったくもって気に入らない。ミストレは何よりの自慢である美しい顔をぐしゃりと歪めて、視線の先で談笑する友人と元敵を睨みつけた。

正直、馬鹿なんじゃないかと思う。あんなに悪だと教え込まれてきた人間に簡単に粋されて。バダップもエスカバもサンダユウも、みんなみんな馬鹿だ。オーガは精鋭の集まりじゃないのか。それとも、これが円堂守の力だというのか。……いや待てよ、じゃあオーガの中で唯一円堂守の呪文が効いていないオレは、…………ふふ、やっぱりオレは特別ってことか。

思考の最終到達点は、結局は自我自賛である。ミストレーネ・カルスという人間は、やはりナルシストであった。

つまるところ、ミストレは引き抜かれて仲間になっても、どうしても円堂が気に入らなかったのだ。
己の仲間達が円堂にデレデレするのを、冷めた目で見ていた。彼曰く、特にバダップまじきめぇ恋する乙女かよ、らしい。

そんなこんなでミストレはオーガの中で唯一円堂と打ち解けないまま過ごしていたのだが、それを放っておくはずがないのが我等がキャプテン円堂守である。

練習後、突然円堂の部屋に呼び出されたミストレは、見るからに不機嫌だった。

「……何か用?」

声もいつもより数トーン低い。そんなあからさまなミストレの態度を気にする様子もなく、円堂は自らが座っているベッドの隣に座るように促す。不服そうに眉をしかめたミストレだったが、渋々といった様子で一人分の距離を空けて腰掛けた。円堂の方に視線を向けることはせずに、自身のおさげにされた髪を指で弄っている。ミストレの癖だ。

どこまでもあからさまなミストレの態度に内心苦笑しつつ、円堂は早速本題を切り出した。

「あのさ、ミストレって俺のこと嫌いか?」
「あぁ嫌いだね。顔はぱっとしないし馬鹿だし暑苦しいし一番嫌いなタイプだよ。いっつもヘラヘラ笑って馬鹿じゃないの?バダップ達も君の仲間達も君の何がそんなに良いのかオレにはさっぱり理解出来ないね」

普通の人間であればオブラートに包むかごまかすであろう直接的すぎる質問に、しかし思ったことははっきり言う(言いすぎる)タイプのミストレの口からは、怒涛のマシンガントークが飛び出した。流石の円堂もこれにはパチリと目を見開いたが、次の瞬間にはやはりニコニコと笑っていた。

「はは、やっぱりかぁ。そうかなぁとは思ってたけど、こんなにハッキリ言われたのは初めてだ」
「…………馬鹿じゃないの」

自分のことを嫌いだと言われたにも関わらずまったく態度が変わる様子のない円堂に、ミストレは自分の中の何かが切れたのを感じた。完全に目が座ってしまっているミストレは、何を思ったか円堂の腕を掴むと、ベッドに放り投げるや否や素早く腹の上に跨がった。

「いっ……!?な、何だ?」

突然の事態に目を白黒させる円堂を見下ろしたミストレは、やっと円堂の笑顔を崩せたことに対するこれ以上ないくらいの優越感を感じていた。更にミストレは動けないように円堂の両手を押さえ付ける。何をされるのかと、円堂の瞳に僅かながら恐怖の色が浮かぶ。元々サディスティックな一面を持つミストレは、自分の気に入らない相手が自分に怯えているという状況に大層興奮していた。

もっと怯える顔が見たい、そう思ったミストレは上体をグッと倒すと、円堂の首筋に噛み付いた。

「ふぎゃっ、!?な、何すんだよ!!?」
「ちょっと、もっと色っぽい声出してくれる?」
「そんなの、ひっ!?」

今度は噛まれたところをべろべろと舐められて、円堂の身体が自然と強張る。気を良くしたミストレが更に悪戯してやろうと円堂の顔に自身の顔を近付ける、と、あることに気が付いた。

顔を真っ赤にして目をきつく閉じている円堂はしかし、怯えている様子も嫌がっている様子もないのだ。それによくよく考えてみればゴールキーパーであり力もあるはずなのに、抵抗する様子もない。

「…………ねぇ、何で抵抗しないの?」

円堂の前髪を引っ張って無理矢理目を開けさせたミストレは、純粋に不思議そうな様子で問い掛けた。痛みから涙目になっている円堂はしばらくうろうろと視線をさ迷わせていたが、観念したのか半ば叫ぶように言い放った。

「……そんなの、そんなのミストレが好きだからに決まってるだろ!」
「……………………は、」

羞恥心からか、円堂の顔は茹蛸のように真っ赤だ。対するミストレはというと、まさかの告白に完全に固まってしまっていた。

しばらくして我に返ったミストレは、気に入らない奴からの告白なんてすぐに蹴るつもりだった。つもりだったのに、自分の下で顔を赤くしている円堂を初めて視界に入れた瞬間、何も言えなくなってしまった。それどころか、ミストレの顔までもがみるみるうちに赤くなっていく。

それから夕飯の呼び出しが掛かるまで、ふたりはお互い真っ赤なまま固まっていた。



臥せろハートを撃たれるぞ!
(可愛いなんて思ってしまった、なんて、そんな馬鹿な!)




title:青春

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うにさん宅で5000hit企画のリクエストをお願いしたミス円です。

うにさん本当にありがとうございました!ミス円もうにさんも大好きです!+*



 
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