南円♀
「お前、色気ねぇな」
「ん?」
目の前でサッカーをする円堂はスカートなのに恥じらいもなく足を上げる。
パンモロではないのは幼馴染みのあいつがスパッツを穿かせたからだ。言わなければ穿くことなどなかっただろう。
円堂から帰ってきたボールを足でキープすれば、あいつは分かりやすく不機嫌そうな顔をしていた。
「はぁ?」
「サッカーバカには必要ねぇか」
「なんだと!?南雲だってバカだろ!」
「ムキになる所が色気ねぇし、お前よりは点数良い」
膝でリフティングすればスカートについた砂を円堂が払う。他の女子みたいに手で払うのではなく、スカートごとバサバサと払うのだ。スパッツがもろに見える。…俺はチラリズムが好きなんだ。
やっぱり色気がない、こいつ実は男なんじゃないかと思った事もあった。だが、たまにみえるヘソだとか白い腹とか、胸とかをみればやはり女なんだと認識するしかないのだ。
「ふんだ、なんだよ、皆して色気とか女らしさってさぁ、サッカーが出来ればいいじゃんか!」
駄々をこねる円堂は唇を尖らせて拗ねた。色々な面々から言われているのだろう。
「…女に生まれなきゃ良かった、男なら気にしないでサッカー出来たのに」
「…」
スカートを鬱陶しそうに翻す円堂と目が合い、何も言えなくなった。
円堂は俺たちと違って女だ、いつかは一緒にサッカーが出来なくなるかもしれない。
「…円堂」
「なーんてな!お前らが何言っても俺はサッカー続けるからな!」
にぃっ、といつものように笑った円堂に色気なんかなくて。でもそこらの女子よりなんか、可愛くみえた。
「…色気なんて、サッカーには必要ねぇからな」
「おう!」
色気や女を求めたら円堂はサッカーからいなくなる。俺たちは円堂を女として見ていたんだ。
「南雲!練習再開するぞ!」
「ああ!手加減しねぇからな!」
「!臨むところだっ!」
パン!とグローブを鳴らして構える円堂に向けて、ありったけの力を込めて蹴り込んだ。
サッカーボールをバカみたいに追い掛けるこいつが俺は好きなので、まだ色気はいらない。…それに、よくみればスパッツだって中々良い。
(チラリズムについて)
2011.11/21