「やぁ守」
「こんにちは円堂くん」

良く晴れた休日の午後、来客を知らせるチャイムで玄関へ走ると、そこにいたのは基山ヒロトらしき生命体だった。生命体、というのはヒロトがなんだかいつもと違ったからだ。

「どうしたんだ?なんだか、首が2つあるみたいだけど」

「守に助けてもらいたくて」
「瞳子姉さんに見つかったらきっと倒れてしまうと思って、姉さん、こういうの苦手だから」

こういうの、とヒロト(グランの髪型じゃない方)は自分たちの首の裂け目を指でなぞった。どうやら瞳子監督は"ああいうの"が苦手らしい。

「とりあえず中に入れよ。ご近所さんの視線が痛いからさ。」

「ありがとう守」
「ごめんね円堂くん」

ヒロトは謝罪とお礼をすると玄関へ入って来た。うちの玄関の幅が足りずヒロトの頭が壁にぶつかってしまったが、なんとか入ることができた。そのまま細い階段を上って俺の部屋に着くまでに2人(?)は頭を壁に数回打ち付けていた。

座布団を用意すれば綺麗に正座したヒロトとグラン(ややこしいから分けることにする)は、部屋をきょろきょろと眺めていた。


「それで、なんで首が2つ生えてるんだ?」

「起きたらこうなってたんだ」
「涼野はふざけてないで早く戻れって言って相手にしてくれないし、南雲は気絶するし、ウルビダは気持ち悪いとだけ言って買い物だよ、頼れるのは円堂くんだけなんだ」

お日様園の面々の性格がなんとなくみえたが、ヒロトとグランはそんなに困っていないようにみえた。あと、頼りにされてもサッカーで解決できないことはどうなるか分からないぞ。あ、サッカーはどうなるんだろう。頭が2つあるなら人数も2人なのかな?でも身体は1つだし…あとで鬼道に聞いておこう。


「それにしても不思議だな、同じ身体に首が2つ生えてるなんて、首の付け根は痛くないのか?」

「痛みはないよ」
「違和感もないんだ、壁にぶつかると痛いけど」

確かにヒロトとグランのこめかみ部分が少し赤くなっている。きっと外側にクッションか何かを付けなければそのうち流血するだろう。

「うーん、困ったな。原因が分からなきゃどうしようも出来ないなぁ…」

どうしようか考えると、どうにかしないといけない問題が山ほどあることに気付いた。

「首を切ってどっちかにするか、身体を半分に裂くかだよなあ」

「わぁ物騒だね守」
「身体を半分にしたらサッカー出来ないよ円堂くん」

「そっか、ううん、じゃあどうしようか…」

頭を抱えて考えているとヒロトとグランがにこにこしているのが目に見えた。

「パンツをくれないか守」

「パンツ?」

「うん、首が2つになる前に欲しいなぁってお願いしたから、それが原因かもしれないなぁ」




「気を付けて帰れよ」

「ありがとう守」
「大切にするよ円堂くん」

洗濯してあったパンツをヒロトとグランに渡すと2人は深々とお辞儀をした。どちらが持つかで喧嘩をしていたが、ジャンケンでヒロトが勝ってパンツはヒロト側のポケットに入っている。

少し日が落ちてヒロト達の姿も夕焼けにぼやけて騙し絵のようになって風景に溶け込んでいるが、黒い影はくっきりと2つの首を写していたから、きっと明日には稲妻町の都市伝説が増えているに違いない。

それにしても今日は疲れたなぁ、明日は思い切りサッカーをしよう。

玄関の扉を閉めようとすると足音がしたので、そちらを向けばそこには見知った顔の生命体が立っていた。


「どうしたんだ吹雪、首が3つあるみたいだけど…」





 
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