♀円堂
「…今のままで僕は十分可愛らしいと思うけど」
「だめだ!アフロディはいつもそれしか言わないだろ!」
久しぶりにサッカーをしない休日、今日はゆっくりしようと部屋に招いたけれど彼女は来るなり『可愛くなるにはどうすればいいんだ!?』と詰め寄った。
どうやらクラスの女子に何か言われたらしい。大方、「彼氏がいるから女らしくなれ」くらいだろうが、今までそんな事気にしていないのになぜ今になって必死になっているのかよく分からない。
サッカーが大好きでおしゃれに無頓着だったし、付き合ってもデートはスポーツ店でジャージというのもあった。僕はそんな所も魅力的だと思うけれど。
「どうして急に、そんなことを言うの?」
「…だって、クラスの女子が『アフロディくんは綺麗だから、今のままじゃ飽きられる』って」
これは驚いた。愛を疑うわけではないがまさかそんなに僕を気にしてくれているなんて!
だが、女子の言い方はまるで僕が守を外見で選んだような言い方だし、何より彼女を否定しているみたいで少し気に入らないな。
「…僕が君に飽きるわけないだろう?まさか、信じたわけじゃないだろうね?」
少し嫌味ったらしい表情で言えば守は分かりやすく表情を歪めた。
「うっ…」
「正直でよろしい。」
小さくなった彼女が子犬のようにみえて、思わず頭を撫でてしまった。守はこちらを見上げて首を傾げる。
「街に行こうか」
「?いいけど、どうかしたのか?」
「リボンを買いに行こう、リボンならサッカーの邪魔にならないだろうからね。」
「本当か!?」
嬉しそうに笑う彼女をみて、どんなリボンをプレゼントしようか考える。彼女の元気さを表すオレンジもいいが、ピンクも捨てがたい。
「あ!でも上手にリボン結べるかな」
「大丈夫、僕が結んであげるから」
「なら、安心だな!」
早く行こうとはしゃぐ守に腕をひかれる。リボンをつけて喜ぶ姿が早く見たくて僕も早歩きをした。結んでやるのが楽しみだ。