水を被ると女の子になる円堂くん
俺の幼馴染みはサッカー馬鹿だ。祖父もサッカーのプロで、そんなサッカー馬鹿2人は幼馴染みが幼稚園の頃にサッカーの修行だという事だと言って突然外国旅立ってしまった。そして幼稚園時代は音信不通のまま、小学校に入る頃に帰ってきた幼馴染みは、水を被ると女になるという摩訶不思議な問題を抱えて帰って来た。なんでも修行中に"女になる"という湖に落ちたらしい。信じられないが本当に目の前で起こっているのだから信じる事しかできない。
『風丸ぅぅぅ!!』
『…またか』
現在目の前にいるのは女の円堂だ。びしょびしょの男だった円堂は今、髪が伸びて、乳までデカくなっている。本来の円堂が着ていた体操服は胸のせいでヘソがみえるくらい持ち上がり、短パンからは白く肉付きのいい足が覗いている。
『体育行こうとしたら水やりしてる人に水を掛けられてさあ!教室は女子がいるし…ジャージ貸してくれっ!』
『気を付けろってあれほど…あー、とりあえず学ラン貸してやるよ。』
『うう、ありがとう風丸!風丸がいてくれて本当に助かる!』
『はいはい、給湯室行くぞ』
俺の学ランを羽織った円堂は学生の注目を浴びないように縮まりながら俺の隣を歩く。
同級生の中では俺しか知らない秘密、どっちの円堂も好きだから、俺は頼られる度に優越感を感じている。
『うう…、俺、ずっとこのままなのかなあ…』
薄暗い給湯室、今は女なのに足を開いて壁に凭れるように座る円堂は浮かない顔をしている。
『…』
円堂の隣で立ちながら壁に凭れ、お湯が沸くのを待つ俺はそんな円堂に少しの罪悪感を抱きながらも頭を数回叩く。
『いざとなったらどっちも俺が面倒みてやるよ』
沸いたよ、と音を立てて知らせるヤカンに近付けば、円堂が背中を軽く叩いた
『お前なあ!人事だと思って!』
『悪い悪い、ほら、お湯』
怒っても怖くない円堂に頭からお湯をかけてやれば、湯気に包まれる円堂。
『戻ったか?』
『戻ってる。』
湯気が晴れた後に立っていたのは本来の円堂。髪も胸も消えている。
『次は気を付けろよ』
『ありがとな!じゃあサッカー行ってくるっ!』
『頑張れよ』
元気に廊下を駆けていく円堂の背中を見送り、叩かれた背中の柔らかな痛みに瞼を下ろして溜息をついた。
『冗談じゃないんだけどな。』
そんな言葉は授業開始のチャイムに揉み消されてしまった。
(少年Kと幼馴染み)
2011.09/17
ら×まパロディです。