『なぁ、そんなに面白いか?』
円堂は、先程から自分の手に頬擦りや感触を確かめるように握り締める風丸に問いかけた
『嫌か?』
『嫌じゃないけどさ、』
嫌なわけでははない、だが、もうずっとこの調子なのだ
風丸は飽きる事なく手で遊び続ける
もう練習は終わったので構わないが、気になる事がある
『俺の手、固いだろ』
ゴールキーパーをしていたら、自然と手の平は固くなっていた。
もし自分の手が柔らかくて、傷もない綺麗な手だったら、喜んでいただろうが、自分の手はそんな手とはかけ離れているから、不安なのだ
『ゴールキーパーだから、当たり前だろ』
風丸はまた俺の手に頬擦りをした
『…そうだけどさ、』
円堂の言葉に、風丸が顔を上げた
しかしやはり手は離さないまま
『俺は綺麗だと思うぜ』
『は』
『円堂の手を触ると、俺も頑張らないとって思うんだ』
ふわりと風丸が笑い、優しく円堂の手にキスを落とした。
円堂は顔を赤くして、数回口をパクパクさせる
『だからさ、』
何も言えない円堂をみて、風丸はまた手で顔を挟んだ
『もう少し、このままで』
再び手で遊び始めた風丸に、円堂は何も言えないまま、また自分の手で遊ぶ風丸を眺めるのだった。
(聞く耳もたず)
2010.12/31