『げ、もうこんな時間か』
読んでいた漫画から時計へ視線を向けると、針は既に12時を回っていた。
このままでは明日の練習に支障が出そうなので、名残惜しいが漫画を閉じる。
ベッドに寝そべり、ゆっくりと瞼を下ろす。すると、思っていたより疲れていたらしく、睡魔はすぐにやってきた。
『(やべ、電気消さねえと)』
頭ではそう考えるが、身体が動かない。すぐそばにある電気のリモコンを捕らえたまま瞼は下がっていく。
消えていく意識の中、部屋の扉が開く音が聞こえた。侵入者の確認もできないほど、身体は眠りへおちていた。
身体は動かないが、気配は感じ取れていた。どうやら扉を開けたやつは、部屋の様子を窺っているらしい。
そのうち帰るだろうと思っていると、扉が閉まった。
『(…行ったか?)』
何となく安堵して再び眠りへ向かおうとすると、足音がするではないか。
『(…誰だ?)』
確認したいが身体がどうにも動かない。足音はベッドまで来るとこちらの様子を伺うように立ち止まった。
『南雲、寝てるのか?』
『!!』
その声で意識が戻ったが、違う意味で動けない。円堂だ、円堂が俺の部屋に、いる!
バクバクと高鳴る心臓が今にも破裂しそうだ。平静を装い、寝たふりをするが、円堂は帰る素振りを見せない
おそらく、部屋の電気が点いていたから、俺が起きていると思って来たのだろう
。
『…おじゃまします。』
そんな推測をしていると、円堂の呟きが聞こえ、それと同時にベッドが軋んだ。そして、俺の背中に高めの体温。
『(円堂が!!)』
バクバクバクバクと心臓がハイスピードで血液を全身へ巡らせる。円堂が隣で寝ている。寝ているのだ。
鴨が葱を背負ってきた、もしくは据え膳とやらだ。いけ南雲晴矢、男を見せろ
円堂のスゥ、という寝息が聞こえた所で、俺は恐る恐る寝返りをうった。
明かりは点いたままだったから、円堂の寝顔がよくみえた。トレードマークのバンダナはなく、いつもより幼くみえる
『…え、円堂』
もしこればヒロトやガゼルの部屋だったならその場で喰われてただろう。少し待ってやったんだ、緊張したとかじゃなくてだな。
そんな事を考えてながら、円堂の顔の横に腕を沈め、額が当たる距離まで近付いた。さっきベッドに入ったばかりだというのに、起きる気配はない。
いや、起きる気配がない所か無防備すぎる。
暫く至近距離で寝顔を見つめていたが、気付く気配もない円堂の寝顔をみているとなぜか馬鹿らしくなってきた。
『…はー、』
ゆっくり溜め息を吐き、未だ五月蝿い心臓を落ち着かせ、自分に言い聞かせるように呟いた。
『きょ、今日はこれだけで勘弁してやる』
その言葉で自分の背中を押すように、円堂に唇を近付けて、額にキスをした。
『…っ!!』
その事実が急に身体を熱くさせ、俺はすぐさま電気消し、逃げるように眠りについた。
『南雲のヘタレ』
南雲が寝息を上げた頃、その隣で寝ていた円堂は小さく呟き、額に指を当てた
『…期待させるなよ、ばーか』
頬を膨らませた円堂は、背中を向けて眠る南雲の背骨に額を押し当てながら眠りについた。
暗い部屋に響くのは2人の寝息だけ
(Good night boys)
2010.07/12
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ちこさんリクエストをして頂いたのに遅くなって本当にすみませんでした!そして、100hitありがとうございました+*