君を殺す為のギフト




冬のある日、ズィルベーンと呼ばれる最北の地で悪魔の子と星守りの子が出会いました。
薄着で倒れていた星守りの子見つけた悪魔の子は彼女をを助けようと、程近いところにある自分の家へと運び彼女を暖かい部屋で介抱しました。
彼の介抱の甲斐あって、星守りの子は数日の内に元気になりました。
そして、さも必然であったかのように星守りの子は自分を必死に介抱してくれた彼に、悪魔の子は「ありがとう」と笑った彼女に恋をしました。

「今は私が守る地に戻らなければなりません。でも、いつかまた、会いに来てもいいですか?」

「勿論。君が来たいときに、いつでも」

そうして彼女は自分が守る地である星見の丘へと帰りました。それから二人は人間のように手紙を交わし、逢瀬を重ね、その度に少しずつ愛情を深めていきました。

二回、年が廻って春。二人は友人や仲間達に見守られ、神族が契りを交わす為の聖樹・宿り木の下で結ばれました。
悪魔の子が神議会七柱の一人であった為か、二人に祝辞を贈る面々は見た目の年齢は幅広いものの高位の神族も集まっていました。
その中の一人の男――神議会の長が祝いの品として一本のボトルを星守りの彼女に贈りました。一部の人間が好んで飲むワインのようにも見えます。

「おめでとう。神議会からの祝いじゃ。是非二人で飲んでくれ」

「ありがとうございます」

「それと、そいつはまだ作ってから浅いからもう二、三年……子供が出来た頃にでも飲むといいじゃろう」

それから暫くは大騒ぎで、二人にとってある意味で幸せの絶頂でした。こうして笑いあう日々が続くんだと、思っていました。

また二回、年が廻って冬になり、二人に子供ができました。子供は双樹で、元気な兄と大人しい弟、真逆の性質を持った子供でした。
子供が出来たことで、生活は忙しくなったもののそれでも二人は幸せでした。何の不便もなく、明るい未来だけが道の先にあるような、そんな気がしていました。

そこから五回、年が廻りました。
悪魔の子はふと神議会の長から貰ったボトルのことを思い出しました。

「子供もそれなりに大きくなったし、そろそろ飲んでみないかい?」

悪魔の子はそう言ってボトルを開けました。開けた途端にとても優しい、それでいて気高い香りが二人の鼻腔を擽りました。
滅多に実ることの無い黄金林檎で作られたお酒だと香りだけで分かる、例え神族ですら手にすることは少ない至高のお酒でした。
悪魔の子は星守りの子のグラスに黄金林檎酒を注いで、それに倣うように星守りの子は悪魔の子のグラスにそれを注ぎ、「乾杯」とグラスを合わせてから香りを味わってから、口に運びました。

そして数秒後、星守りの子は助けを求めるように悪魔の子を見て、眠るように息を引き取りました。



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<ギフト>
英:贈り物 独:毒物


20121015

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