夜になった彼の話




彼はいつも嘆いていた
「夜になることが出来れば
こんな腐りきった世界を
見ずにすむのに」と

私は所謂唐変木な人間で
「人間に生まれた以上は
そんなこと無理なのに
馬鹿みたいだね」と
彼を否定し続けた

彼はいつも笑っていた
「夜になることが出来れば
愛してる人を抱いたまま
眠れるのに」と

私といえば天の邪鬼で
「夢を見ていたいのなら
眠ったまま起きなければ
幸せなんじゃないかな」と
彼を否定し続けた

そうやって彼を否定し続けたら
いつしか彼は私の前から姿を消して
独りぼっちになった私を
静かに笑ってた

悔しくて悲しくて泣いていた
そうして彼が残した
小さな紙切れを見つけて
広げてみると

「君には夜がどう見えてますか?
僕は腐った世界を見ることもなく
愛してる人を抱けて幸せです。
ただ1つ後悔があるとすれば
愛してる人の笑顔が暗闇のせいで
見られないことくらいかな」

それだけ書いてあった
どうやら私の涙腺は壊れたようで
いくら止めようとしても
溢れる涙は止まってはくれない

数時間も経って
やっと涙が止まった頃になって
私は気が付いた
私は彼が好きだったんだって


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20121015

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