【2】
2073年7月17日――シャンテ
終焉を齎す"星"と思われる物を発見した探検家が何者かに殺された。
そんな報せが記事の一面を飾っていた。
(あぁ、彼奴死んだのか)
知り合いの訃報にそんなに驚くこともなく、止めていた足を動かす。レンガ造りの住宅が所狭しと両脇を埋める小路で更に記事を読み込む。
男――ハインツが死んだのは、終焉を齎す"星"と思われる物が発見されたエンデ湖付近の祠から学術都市デンガロンに帰ってから二日後の事だったらしい。
暫く前に此処――シャンテを出て行ったと思ったら、もう帰ってこないのか。大発見でもしたら一晩中それを肴にして飲み明かす約束をしていたのに。
「リーニエ〜!」
遠くから聞き覚えのある女の子の声が聞こえる。そちらを見れば同じ職場・停戦機関フェアトラークの記録係、レルヒェが長い黒髪を揺らしながら走っていた。
「レルヒェ……そんなに急いでどうしたの?」
「どうしたの? じゃ無いわよ!」
いつもカリカリしているレルヒェが、いつも以上にカリカリしている、気がする。
「コネートルが呼んでるわ。次の仕事の話だって」
なんであたしがこんな事しなきゃいけないのよ、とかぶつぶつと愚痴を溢しているけど、それは団長に言うべきじゃないかな。
「……分かった、行ってみるよ。あ、レルヒェ、後で呑みに行こうね」
「行ってらっしゃい〜、ってあたしたち未成年だから!」
ハインツと呑み明かす予定だったが、彼がいないならしょうがない。罰当たりかも知れないが、ハインツの訃報と昔話でも肴にして忘れてしまおう。 そんなことを考えながらフェアトラークのシャンテ支部へと歩みを進めた。
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