火葬


いつかは消える
肉も骨も、思い出も
平均八十年程度の
短い人生を歩いて
疲れているのかと思えば
目一杯遊んだ子供のように
笑みをのせて眠っている
もう目を覚ますことはない
周囲が泣き喚く中
ただ一人、冷めた表情の私
心が無いと言わんばかりに
悲しみも、怒りすらも
湧いてはこなかった
そこには、死んだ、という
認知しか存在しなかった
死んだと認知しているのに
また、ただいま、と言って
笑顔で帰ってくると信じこむ矛盾
身体は大人になっても
心は何処か子供じみていた

「バイバイ、また明日」

聞こえるか聞こえないか分からない
蚊の鳴くような声で告げて
思い出に蓋をする
思い出は、両腕にのし掛かって
私の首を絞める

いつかは消える
肉も骨も、思い出も
ただ炎に包まれて
灰になって空に消えていく
人が焼ける臭いは
何処か気持ち悪くて
到底忘れられないだろう
そんなことを思いながら
憎らしく澄む青空を見上げた

「バイバイ」

投げた言葉は震えていて
投げた言葉に返事もなくて
それを実感すればするほど
私の心は苦しくなった

「……おやすみ」


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20120229


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