酸素ボンベ



電子端末をのぞきこむ僕と、
そんな僕の隣に立つ君。
吐く息が白く染まる冬。
左手と右手は繋いだままで。


繋いだ手はまるで酸素ボンベのようだ。
僕から見たら君が、
君から見たら僕が酸素ボンベ。
君が無かったら生きられないんだ。
それくらいに弱いんだ。


僕は卑屈で臆病だからさ、
この口で感情を伝えられない。
でも僕の心臓は痛いんだ。
伝えられない感情で破裂しそうだ。
だから電子端末に思いを乗せて、
君の左手に届けるよ。


電子端末をのぞきこむ僕と、
そんな僕の隣に立つ君。
吐く息が白く染まる冬。
君は驚いた顔をした。


酸素ボンベを外したらどうなる?
外しても呼吸は出来るのか、
水に溺れてしまうのか。
君から酸素ボンベ(僕)を取ってみよう。
僕から酸素ボンベ(君)を取ってみよう。


『君に興味無くなった』

『顔も見るのも嫌』

『もう、さ』

『別れようか?』



溢れ出した涙は僕のだったのか、
はたまた君のだったのか。
繋いだ手は呆気なく解けて、
酸素ボンベも無くなってしまった。
君は呼吸をしているのに、
僕は溺れてしまったみたいだ。



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こうなることは分かっていたのに


2011/11/26


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