白い影は幻



―――黄玉に透けた月は、幼い過去を隠していた。


もう、十年くらい経つんだろうか……。
昔は彼とあちこちを走り回っていたのに。今は僕だけが走り続けてる。何処に向かうのかも分からずに。

「何処に行っちゃったの?」

その頃の僕はあまりにも幼すぎて、彼が"死んでしまった"という事実を理解していたようで、理解していなかったんだ。
まるで、丸一日かくれんぼをしているかのような錯覚に見舞われたのを覚えている。
僕はの錯覚に溺れて、彼を探し続けた。
彼を見付けられるのは決まって月が揺らぐ真夜中のことで、何時だって苦笑いを浮かべているのだ。

「何時になったら本当の私を見付けてくれるんだ?」

ある時、彼はそう言った。
そこではじめて僕は、彼が自分自身が作り上げた妄想から成り立つ虚像だということを知ったんだ。

「なら、本当の君は何処にいるの?」

「私は、何時だってお前の隣に」

虚像だと頭で理解しても、心が……彼のいない現実を認めやしない。
だから、十年の年月を経ても、こうやって頭の中の虚像を追い続けてるんだ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

君の足元に伸びる白い影
幻の君を追いかける僕は―――


20110922


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