碧く咲き誇る薔薇を添えて



―――揺れたカーテンは彼の血で紅く染まった。



彼は左肩を紅く染めて、床に仰向けで倒れていた。撃った張本人である僕はといえば、彼の頭の右横に膝をついて、堕ちる涙を止められずにいた。

「……何故、心臓を撃たなかった?」

薄く開く瞼の奥で輝く紅の瞳は、攻め立てるかの如く僕を映した。僕はその質問に、満足させられる答えを持ち合わせていない。

「怖かったんだ」

敢えて理由を付けるのであれば、それが一番しっくりとくる。

「……怖かったよ。だって僕の手が君の命を奪ってしまう。残された僕はどうすればいい?」

歯止めが利かなくなった感情の波は防波堤を易々と乗り越えて、疑問となって彼に襲いかかる。

「ねえ!? 撃てって、殺せって、そんなこと言うんだ、僕の疑問に答えることくらい簡単だろう!?」

涙は堕ちる勢いを増した。
彼は動かすことができる右手を上げて、僕の目元を攫っていく。

「すまない。……だが、この苟且の体ではお前と共に歩くことは叶わぬ」

そう言った彼は、苦い笑みに沈んでいった。
あぁ、きっと、疑問に答えないのは、沈黙や肯定ではなく……彼なりの優しさだったんだろう。



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苟且だろうと
彼と生きられるのなら
それで良かったのに


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