ラストダンス
掴もうとしたそれは―――
「さぁ、ラストダンスを」
彼は私に手を差し出す。
何が、ラストダンス、だ。元々始まってすらいない舞踏を終わらせるなど、甚だしいことこと上ない。
月光だけが照らすホールの真ん中で、紅い瞳を輝かせて嗤う彼を見遣れば、「さぁ」と再び私を促すように手をひらりと踊らせる。
「お望みとあらば、この命尽きるまで」
手を取ったのは只の気紛れ。
遊び心の一つや二つ無ければ生きていけぬこの世界で見つけた唯一の玩具で遊ぶだけ。
あぁ、どうせなら、この身が灰になってしまえば良かったのに。
―――儚くも空に溶けていった。
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愛したって、
どのみち報われないのだから
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