言葉じゃ伝えられない心がある 03
「おー、奨君! おかえり」
部屋へ戻ってきた奨に気付き、近藤が声を上げる。奨は小さくお礼を返し、円の隣に腰を下ろした。
「あ、あの……万屋さん」
奨が銀時に声をかける。銀時は気だるそうに目線だけを奨に向けた。
「ご迷惑かもしれないですが、円と一緒に俺もそちらに泊めてほしいのですが……」
「え? まじで? 布団ねーよ」
「大丈夫ですよ銀さん、布団ならお登勢さんから借りれます」
「仕方ねぇな〜。依頼金は貰うからな」
銀時は面倒くさそうに奨の申し出を承諾した。奨は自分の兄に、意味深な目線を向ける。
「…………奨? その目は何を訴えてるのかな?」
山崎が頬を引きつらせて奨に問う。
「勿論分かりますよね?」
奨が笑顔で言う。
「勿論分かりますよね?」
円も笑顔で言う。
「「お・か・ね」」
二人の声が合わさった。
「こいつらどっかで打ち合わせでもしてきたのか!? もーいいよ、分かったよ、俺が新しいラケット買うの我慢すればいーんだろー!」
山崎の悲痛な叫びが屯所内に響いた。
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