言葉じゃ伝えられない心がある 01
「首尾よくやってるみたいじゃねぇか」
携帯電話を通して高杉の声が響く。声だけ聞けば、なかなか女受けしそうなのに。大概の女は高杉の放つ威圧感や彼の鋭い眼光に当てられ、おののいてしまう。高杉に何度も近寄っていく異性なんて来島また子くらいだ。
「兄貴との感動の再会は果たせたか?」
「……まぁ、はい」
「どうした、躊躇ってるのか?」
「いえ、ここまで来たら最後までやり遂げます。ただ……」
奨は何か引っ掛かるものがあり迷っているフリをする。高杉がそれに騙されるか否かは重要でない。ただ単純に、高杉がどう答えるかが気になった。
「不思議な人物に出会いました」
はっきりとした声で切り出した奨に、高杉は沈黙で続きを促す。
「見たところ、真選組の幹部と同等――もしくはそれ以上の実力を持っていると思われます。しかし彼は真選組の人間ではないそうで……」
電話の向こう側で、喉の奥で噛み殺したような笑い声が聞こえた。奨の言わんとすることが分かったのだろう。
「へぇ……銀時とも会ったのか」
隠すそぶりもなく、高杉は男の名を呼んだ。奨は少し眉を潜める。
高杉がかつて攘夷戦争で活躍したのは勿論知っている。その中に『狂乱の貴公子』や『白夜叉』と呼ばれる、化け物みたいに強い者も居たとか。高杉と彼らの関係――かつては『仲間』、『戦友』などと名付けられたであろうそれは、今は何と呼ぶのだろう。
それは奨が到底知り得ないことで、また本人達にも分からないことなのかもしれない。
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