廁とは絶好の秘密の隠し場所だ 05
「へぇ……万屋ですか――もしかして」
「? 何か言ったアルか?」
だんだん俯く奨の顔を覗き込むように、神楽が近付き問う。
「あ、あの……ちょっと厠に行きたいんですが……」
奨はパッと顔を上げて、恥ずかしそうに申し出た。山崎がすぐに対応する。
「それならここを出て右に真っ直ぐ行けばいいよ」
「分かりました。じゃあ、失礼します」
先程の出来事で傷ついたドアを気にしつつ、奨は一礼して厠へ向かった。それを見て近藤がうんうんと頷く。
「礼儀がしっかりしてるじゃないか」
「ゴリラに比べれば誰でも行儀がしっかりしてるアル」
「そうだ山崎、確か今夜から密偵の仕事が入っているはずだが……大丈夫か?」
「だよなー、日々脱糞してる奴に比べりゃなー」
「……はい、大丈夫です」
「ちょっと二人とも! ゴリ……近藤さんは山崎さんとお話し中ですよ!」
「無理はするなよ」
「……はい」
途中途中に万事屋の会話が聞こえてきたが、近藤はそれを涙を拭いながらスルーした。山崎は何か複雑な気分だったが、ここは空気を読むことにした。
「……局長って一体どんな人なの」
一連の会話を聞いた円が、疑わしい目で近藤を見ながら、山崎に小声で問う。
「……はは」
これには山崎も苦笑で答えるしかなかった。
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