死にたいって言う奴程死なない 06
「円っ、何でここに……」
円がこの場に居ることに、完全に意表をつかれる。しかも、目の前の侍と知り合いのようだ。そもそもこの侍と真選組は、どのような関係なのだろうか。
「こんなこと、ダメだよ……戻ろう?」
円のか細い説得に、奨の思考は一時遮断される。奨は一瞬バツの悪そうな顔をしてから、重々しく口を開いた。
「……円には、こんなところ見られたくありませんでした。兄の死に様など」
「奨っ!! 私は嫌だよ……父様も亡くなって、奨も……なんて」
「円……」
円は家で、奨や父親のために家事を行ってきた。ずっと一瞬に居たのだ。
それを2つ同時に無くしてしまったら――円はどれだけショックを受けるだろうか。
そんなことを考えると、命を絶とうなどという行為はひどく非道に感じた。
「円――」
奨は気付いていた。
銀時の腕を掴む力が、弱まっていることに。その気になれば、すぐに振りほどけることに。
銀時は、奨に死ぬ気がないことを分かっていたのだ。
「大した男と出会ったものですね……」
奨は感嘆するようにそう呟き、銀時の手を振りほどいた。
そして、嗚咽を漏らす円のもとへ駆け寄った。
「お騒がせ致しまして、すみませんでした」
事態をハラハラしながら見守っていた群衆に、そう一言お詫びを入れて。
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