死にたいって言う奴程死なない 05
「離して下さい……」
「嫌だと言ったら?」
「……俺の動きによっては、あなたも落ちてしまう危険があるんですよ? いいんですか?」
奨が橋の板すれすれのところに立っているのと同じく、その腕を掴んでいる銀時も、バランスを崩せば下に落ちてしまうような位置に立っているのだ。
挑発ともとれる奨の発言に、銀時は不敵に笑った。
「俺の心配より自分の心配したほうがいいんじゃねェの?」
「……状況分かってます?」
奨は自ら落ちようとしている身だ。何の心配が要るというのだ。
「こんなに周り騒がせといて君よォ、死ぬつもりなんかないんだろ?」
笑みを浮かべたまま確信を持った様子でそう言い切った銀時に、驚愕の表情を曝け出したのは奨だけではなかった。
「ちょ、旦那! 何言ってるんスか!?」
「オイオイ ジミーくん、それでも監察か? いかがわしいものばっか監察してよォ」
「人を変態みたいに言わんで下さい!」
「さっきこいつがバランスを崩したとき、こっちが引っ張られるくらいに踏ん張ってたぜ。そいつが死にたい奴のとる行動かねぇ。なぁ……妹ちゃん?」
誰も気付いていないと思っていた奨は、動揺を隠せなかった。川に落ちそうになった人間が本能的に取る瞬間の行動を、この男は――。
銀時が目線を横に逸らして呼びかけた先には――妹、円が居た。
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