「えへへー室ちーん」

なんだかすごく上機嫌な敦の声が後ろから降ってきた。続いてずしりと肩に重みを感じる。嬉しそうな敦は見ていて癒されるし、抱き着かれるのも犬に懐かれているようで嫌な気はしないのだが、少しだけ問題があった。

「暑いな」
「んー夏だもんね」
「敦、」
「退かねーし」

ぷうと頬膨らませる大男など本来ならかわいくなんてないはずだけれど、敦は例外だと思うのはおかしいのだろうか。
機嫌が悪くなっても嫌だからと背中に張り付くコイツのことはそのままにしておくことに決めた。諦めたことに気付いたのか、喜色満面の敦が再び話しかけてくる。

「さっき食べたのがちょーおいしかったんだ。だから室ちんにもおすそ分けー」

機嫌がいい理由はそれらしい。はい、と後ろから差し出されたチョコ菓子はもうすでに敦が口をつけた後のようだった。確か袋詰めのものを持っていたはずだと首を傾げると、最後の一個だよ?と敦から答が返ってくる。

「最後かじって思いついたから」
「気にしなくてよかったのに」
「あらら、いらない?」
「いや、せっかくすすめてもらったんだ。いただくよ」
「じゃあどーぞ」

すすめられるままに口をつけると、少し甘味が強いが確かにおいしいと言っていい味がした。たまにはこういった菓子もいいかもしれない。

「うまいな」

素直に感想を伝えようと背後を振り向くと、悪戯が成功した子供のような顔をした敦と目があった。

「室ちんの間接ちゅーもーらい」
「オマエな、」
「アラ〜?怒ったー?」

思わず脱力して眉間に手を当てて俯いてしまったが、覗き込むようにそんなことを聞かれては何も言えない。なんでもないよと笑いかけると、ただでさえ近かった敦との距離がさらに縮まった。ちゅっとかわいい音が聞こえてきて、間接どころか直接までされたのだと気づく。

「チョコついてたよー。あ、でも取れてねーしっ」

悪気なくそう言い放つ敦に、今度こそ完全に力が抜けた。


しよっか
きっかけはなんだっていいから




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初紫氷!氷室に抱き着いて紫原がえへへってしてたらかわいいと思って、口調も掴めてないのに書いてみました。わかりにくいですけど、氷室は紫原の手から直接食べてますよ。
紫原がかわいすぎて胸が痛いです。


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