(帝光黄緑前提)






「オレ、君が嫌いなんだよね」


にこりと笑みを作る自分がどんな表情をしているかなんて鏡を見なくたってわかる。男の嫉妬は醜いって、誰が言ったか知らないけど、その通りだと心でつぶやいた。
大きく見開いた目をそっと伏せた目の前の彼をどこか遠くから見ているような錯覚がする。オレの言葉に応えようと動く口だって見えるし、そんなわけないんだけど。

「なんで、」
「そんなことを聞くのかなんて言うなよ。すっげームカつくから」

自分でも理不尽だとはわかってても言葉が止められない。文句言われて困惑してるとは思う。コイツたぶんオレのこと知らないし?

なんて、思ってたら。

「もしかして、たかおクンっスか?」
「は?」
「…合ってるみたいっスね」

まさかまさかの予想外。
え、なにエスパー?それか小学校一緒だったとかそんなオチ?雑誌で見かけたのと真ちゃんから聞いた以外でコイツのことなんかまったく記憶にないんだけど。
ぐしゃぐしゃに絡まっていく思考。無駄な考えを巡らせそうになるが、続きを待てばどうしてかわかるだろうと口をつぐむ。

「緑間っちがよく話してるんで。前に誠凛との練習試合のときも来てたっスよね?」

けど、それがさらに頭の中をこんがらがせるものになるとは思わなかった。

「……緑間が?」
「はいっス」
「…オレの?」
「はいっス」
「話、を?」
「はいっス」

待って、ちょっと待って。整理させて。緑間がかつての仲間にオレのことを話してる、しかも名乗らずに誰かわかるほどに。さらによくときた…いや、きっと愚痴ばっかこぼしてるに違いない。高校ではそんなこと言える奴いないからわざわざ同中のダチに文句言ってんだろ。くっそー余裕なくしてんぞオレ。いつも通りいけっての。

「真ちゃんのことだからどうせ文句ばっかだろ」

うわー言ってて悲しくなってきた。事実だから受け止めるけどね。オレだって傷付くときは傷付くんだぜ真ちゃーんと声に出さずに叫んでいたが、視線を感じて顔を上げる。


目の前が、ぐらりと歪んだ。



「まあ、そうっスけど」


なに、その、笑顔。
嬉しそうとか幸せそうとかそんな、いや、まるで我が子を思うような愛しげな表情。オレを見てるはずなのに、視線自体は向いてるのに、それはオレに向けたものではなかった。

「そうじゃないって、わかってるっスよね?」

誰に対してなんて、そんなのわかりきってる。
小綺麗な顔に気圧されておざなりに頷くことしかできなかった。ああもう降参だ。面と向かって喧嘩売りに行ったオレが馬鹿みたいじゃんか。まだあの表情のままでいるのかと思うと、頷いたまま顔をあげることすらできやしない。


「ちなみに、」

なんだかいたたまれなくなってざりりと足裏を地面にこすりつける。

「オレは結構アンタのことすきっすよ。オレがなれなかった緑間っちの支えになってくれてることも感謝してるっス」

ねえ、高尾っち、と続けられた言葉に今すぐにでも逃げ出したくなった。


同族
過去にだって負けたくないんだ





10*5*7



黄→緑←高でどろどろな話が書きたかったはずなのに黄瀬が大人になりました。
「なあ、オマエのせいで真ちゃんが前に進めないんだけど。消えてくんない?」
「余計なお世話ってのがわかんないんスか?むしろアンタが消えるべきっスよ」
な予定だったんですけど、ね!春は仲良しな黄と高が、だいすき、です(説得力皆無)



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