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「何してんねん」

山中での実践任務が無事終わり、せっかくなので相当年期の入った樹木の皮を剥いでパズルを作っていると、頭上から聞き覚えのある声がした。

「パズル。勝呂も一緒に遊ぶか」

地面を見つめて一心に樹皮を並べていた顔を上げ、くそ真面目な顔で自らの足元を指差す。すると勝呂はただでさえきついその顔を一層険しくしてわたしを見た。それにしても勝呂はいつも小難しい顔をしているな。老けるぞ。

「というかこんな辺鄙な場所で何をしているんだ勝呂は。任務は終わったはずだよ」
「誰のせいじゃ誰の」
「……わたしの予想では奥村兄だな」
「お前に決まっとるやんけこのドアホ!任務終わって急にどっか行くやつがおるか!」

ビシィ!と額に青筋を立てて怒鳴られる。さすが勝呂だ、頭に響く。でも勝呂はそんなことでこんなに怒るようなやつだっただろうか。わたしも馬鹿ではないから帰り道くらいは分かるし、一人が寂しい年頃でもない。むしろ大歓迎だ。あ、そういえば行きつけのラーメン屋のスタンプカードが満杯だった。チャーハンのサービスじゃないか。近いうちに行こう。

「…ああ!もしかしてわたしが勝呂のかばんの中にこっそり入れておいたアンモナイトの化石ちっちゃかったか。すまん、今度から気をつける」
「ちゃうわ!つかお前勝手に何してくれとんねや!」
「なんだ勝呂はアンモナイト嫌いなのか」

ちゃうねんそういう問題ちゃうねん、と呟いて勝呂は頭を抱えた。トサカをぐしゃぐしゃと掻きむしる。うん、やっぱり勝呂のトサカはいつ見てもかっけーな。

「勝呂、どうした。お腹でも痛いのか」

なかなか顔を上げない勝呂が心配になってゆさゆさと肩を揺らしてみる。無反応。いつもなら一番ナイスリアクションな勝呂が反応無しだなんて、もしやこれは本当に食あたりではないか。
そういえばどっかに胃薬を常備していたはずだ。どこだったけか。ちょっと待っていろ勝呂、今すぐ助けてやる。

「飲め、みんなの味方正露丸だ」

背負っていたリュックサックの最深部からポーチを取り出し中身をばらまいて正露丸を渡す。しかし勝呂はゆるゆると顔をあげたまま受け取ろうとはしなかった。

「正露丸は飲めないのか。いかつい顔してお子ちゃまだなこれだから平成っ子は」
「お前は分かってへん」
「確かにわたしは正露丸なんぞが飲めない勝呂の気持ちは分からん」
「正露丸の話ちゃうわアホ!」

ばちこん、と遠慮なく頭を叩かれた。痛いぞ勝呂。頭蓋骨が粉砕したらどうしてくれるつもりだ。

「お前が急に消えて俺がどんだけ心配した思ってんねん!」

ずっと探しとったんやぞずっと!人差し指を突き付けてそう言う勝呂は祓魔師の卵とは思えないほど悪魔じみていたが、それを言うと更に怒りのボルテージが上がりそうなのでやめておいた。やれやれ全く難儀なやつだ。

「この薄暗い中妙なやつに襲われたらどないすんねん!」
「安心したまえよ、わたしは優秀な祓魔師もどきだ」
「だから自分アホや言うねん!ここにおるんは悪魔だけやないんやぞ!」

どうやら勝呂は、わたしが変質者に襲われるのを危惧していたらしかった。なるほど、たしかにわたしは体術はそれほど得意ではないな。

「勝呂は、今までずっとわたしを探してくれていたのか」
「ペアが行方不明なったら探すのが当然や!」
「そうか、勝呂が」

任務が終わったのが午後1時過ぎで、今はもう4時だ。ということは3時間も勝呂はわたしを探していたことになる。3時間。そんなにあればとっとと帰宅して録画したいいともを見れる。なんてことだ。

「すまん勝呂」
「すまんで済む思っとるんか人心配させといて!」
「次からもうこんなことはしない。パズルは、勝呂と一緒に作ることにする」
「何で俺があんな訳分からんパズル作らなあかんねん!」
「勝呂も作りたかったんじゃないのか」
「作りたないわ!」

てっきり勝呂も作りたかったのかと思っていたぞと呟けば、なんやほんま疲れるわ、と深いため息をつかれた。3時間も歩き回っていたんだそりゃあ疲れるだろう。あ、そうだ。

「勝呂、昼食か夕食またはそれに値するものを食べたか」
「食えるわけないやろ」
「なら良い、今からわたしが良い場所に連れていってやろう」
「は?」
「ぱっと見アレルギーはなさそうだからな、大丈夫だろう」

まあついて来なさんな、と勝呂の制服の裾を掴むと即座に振り払われた。なんだなんだ。裾をつかまれると何かが疼きだすとかそういうアレか。

「心配するなわたしは他言したりはしない。まあその、そういう時期はあって良いと思うぞ」

まさか勝呂が今そういう、中二的な時期真っ盛りだとは思わなかったが、今考えるとトサカもピアスもその一種なのかもしれない。

「いやお前何言うて…」
「勝呂は育ち盛りでもあるからな。食べないのは良くないぞ」

鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている勝呂を置いて先に歩きだす。後方から、ちょお待ちや!と慌てた声と共に小走りで近づく足音が聞こえた。あそこはたしか4時開店だ。早く行かないと二人で座る席が取られるな、急がねば。



20110704


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